「子宮頸がんは、ワクチンによって防げる病気です。子宮頸がんの原因ウイルスであるHPV(ヒトパピローマウイルス)は中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどの原因にもなることが知られ、世界的には男女ともにHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を接種するのがスタンダードになっています」と、産婦人科医で、「藤沢 女性のクリニックもんま」院長の門間美佳さんは言います。すべての人が知っておきたい、HPVワクチンについて紹介します。

日本はHPVワクチン接種率が低い

 日本では2013年4月に小学校6年生~高校1年生の女子を対象にHPVワクチンが定期接種(無料)になりました。しかし、接種後の副反応が報告されたことから同年6月には厚生労働省が積極的推奨(対象者のいる世帯への予診票送付)を中止しました。他の予防接種のように自治体からお知らせが届かないため、無料接種の存在すら知らない人も増えてきています。知ってはいても、「副反応が怖いから」という理由でわが子の接種をちゅうちょしている人もいるかもしれません。

 そうした背景から、近年、日本のHPVワクチンの接種率は1%未満に低下しています。これは諸外国に比べても格段に低い数字です。

  「Countries Including HPV Vaccine in their National Immunization Programs (NIPs):Year Introduced, Target Age Groups, Delivery Method, and Coverage, 2006‒2015a」をもとに作成
「Countries Including HPV Vaccine in their National Immunization Programs (NIPs):Year Introduced, Target Age Groups, Delivery Method, and Coverage, 2006‒2015a」をもとに作成

 日本でも男性もHPVワクチンの接種を受ける動きが広がり、厚生労働省は20年12月にHPV4価ワクチンの対象を男性に拡大する方針を了承しました。女子を持つ親だけに限らず、すべての人が知っておきたいHPVワクチンの知識を、門間さんの話をもとに紹介します。

小6~高1までの女子の定期接種対象になっている(写真はイメージ)
小6~高1までの女子の定期接種対象になっている(写真はイメージ)