ガールフレンドとのデートだと思って子どもに奉仕する

 “東京発半日旅”を始めたのは、娘が生まれたというタイミングもありました。国内の近場だと、何かあったときでもすぐ戻って来られるので、気持ち的にも楽なんです。ただ、“子連れ半日旅”になると、当たり前ですが、妻や友人と出かけていたときとは全くの別物になります。

 まず、目的地が変わります。うちの娘は今2歳なのですが、“ガールフレンドとのデート”だと思って、とにかく楽しんでもらえるように全力で奉仕します(笑)。そうなると行き先は、当然子どもが喜ぶところになる。自分は行きたいけれど子どもは興味ない、というようなところには行きません。娘はまだ幼いので、行きたいところは日常の地続きにあるんです。

 例えばNHK教育の子ども向けテレビ番組で、アルパカとオカピが出てくる歌があって、それを娘がいつも歌っていました。そこで栃木のアルパカ牧場へ行って、後日オカピのいる金沢動物園にも行く“動物ツアー”を実施したら、大喜びしてくれました。

 テレビや絵本など、子どもが普段接している物語に出てくる動物や自然を、実際に見せてあげる、触れさせてあげる、体験させてあげる。これは教育的な意味合いも大きいと思っています。

 また、旅行に行く前と行った後には予習と復習をするようにしています。例えば芋掘りに行く場合、何日か前から「今度どこに行くんだったっけ?」と聞いて、帰った後は、掘ってきた芋を食べるときに「この芋どうしたの?」って聞いたり。そうすることで、一つひとつの思い出が印象深くなるんです。

 子どもが行きたいところが最優先ですが、工夫次第で大人が行きたいところでも楽しめることもあります。例えば昨年、初詣に佐野厄除大師に行ったのですが、小さな子どもには神社はあまり面白い場所ではありませんよね。そこで事前にインターネットで子ども用の巫女のコスチュームを手に入れておいて、それを着させて写真を撮りました。非日常感があってとても喜んでいましたね。

 ただ、子ども連れで人が多いところに行くと、楽しむ以前に疲れてしまうことが多いので、半日旅では基本的に週末の大型テーマパークや遊園地などは避けています。普段東京で暮らしているので、自然豊かなスポットや、休日でも混んでいない動物園などに行くことが多いですね。

 子連れ半日旅で大切なことは、欲張り過ぎないことです。当たり前ですが、子どもは大人よりも体力がなく、ぐずったりすることも多い。なので、行き先は思いつきでいいのですが、「アルパカを見る」「巫女姿で写真を撮る」といった大きなテーマを一つ決めて、それだけかなえば満足、というくらいの気持ちの余裕を持ったほうがいいですね。あれもこれも見たい、行きたいとならないように注意しましょう。

 普段旅行に行く時間がないビジネスマンや旅行ビギナーの方は、どこにいったらいいのか分からないこともあると思います。でも、半日旅は特別なものではありません。極端に言えば、よく行っている街の知らないスポットだったり、住んでいる地域の沿線の降りたことがない駅で降りたりすることでもいいんです。

 なじみの場所でも、それまで知らなかった面白い場所を見つけると得した気持ちになります。宝探しのような気軽な感覚で楽しんでほしいですね。後編に続く)

(取材・文/藤谷良介 写真・岩澤修平)

吉田友和
旅行作家
1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行ながら夫婦で世界一周を敢行。2005年より旅行作家として本格的に活動を開始。国内外を旅しながら執筆活動を行い、短期旅行を中心に、ここ数年は“半日旅”にも力を入れている。著書は『3日もあれば海外旅行』『10日もあれば世界一周』(ともに光文社新書)、『思い立ったが絶景』(朝日新書)や自身をモデルとしてドラマ化もされた『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン』(幻冬社文庫)など多数。近著は『東京発 半日旅』(ワニブックス)。