よくある赤ちゃんの悩みで、心配するお母さんの割合が高いのが「肌荒れ」や「アトピー性皮膚炎」。アトピー性皮膚炎は早い子では生後1カ月で発症するため、気にするお母さんが多いのは当然かもしれません。最新の研究で、アトピー性皮膚炎になりやすい赤ちゃんのタイプと、アトピーを発症させないために日常生活でできる予防ケアが明らかになってきました。研究をした国立成育医療研究センター・アレルギーセンターの大矢幸弘センター長に話を聞きました。

乾燥肌の赤ちゃんは要注意。生後1、2週目からかさつきチェックを

 0~2歳の乳幼児の体調不良で最も気になるのは肌荒れ(36%)という調査があります(※1)。赤ちゃんが生まれたら、「わが子がアトピーにならないようにしたい」と願う親は多いでしょう。

 厚生労働省の最新の患者調査(2014年)によると、アトピー性皮膚炎が最も多いのは1~4歳で、その数は全国で約5万8000人に上ります。以前から乳幼児にアトピー性皮膚炎が多いことはよく知られており、その数は年を追うごとに増加しています(※2)。こうした状況の中、ぜひ知っておいてほしいのが「アトピー性皮膚炎になりやすい赤ちゃんのタイプがある」ということです。そして、そのタイプの子を早く見つけてケアしてあげれば、アトピー性皮膚炎ばかりか、食物アレルギーまで予防できる可能性があるというのですから、朗報です。

 この事実を厳密な臨床研究によって突き止めた国立成育医療研究センター・アレルギーセンターの大矢幸弘センター長は「アトピー性皮膚炎になりやすいのは、生まれつき肌が乾燥しやすく、皮膚のバリア機能が低下している赤ちゃんです」と説明します(グラフ1)。

 【グラフ1】 乳児の水分蒸散量とアトピー性皮膚炎発症率との関係
 【グラフ1】 乳児の水分蒸散量とアトピー性皮膚炎発症率との関係
新生児の水分蒸散量(TEWL)を測定し、乾燥肌(TEWLが高い群)と普通肌(TEWLが低い群)に分け、生後32週までのアトピー性皮膚炎の発症率を観察すると乾燥肌群のほうが普通肌群よりアトピーの発症率が高かった (大矢さんらの研究から。.Allergology International 65(2016)103-108を参考に作成)

 さらに乾燥肌の赤ちゃんがアトピー性皮膚炎になると、食物アレルギーを併発しやすいことが分かっているそうです。その一例として、大矢さんたちは、アトピー性皮膚炎の発症が卵アレルギーの発症と関連することも確認しています。

 赤ちゃんが食べたものをきちんとぬぐわず、肌についたままなどにしていると、「アトピー性皮膚炎で肌が荒れてバリア機能が低下している部分から、食品の分子が侵入し、それがアレルゲンとなって食物アレルギーを発症する可能性が強く疑われています。時には、家族が食べた食品の分子が空気中を舞っていて、それが荒れた肌に付着して侵入し、アレルゲンとなることもあります」(大矢さん)

 このようなアレルギー体質を持つ赤ちゃんは、生後1~2週目ごろから肌が乾燥してきます。

 生後1~2カ月の赤ちゃんは頭部が脂漏性皮膚炎でべたついていることが多いものですが、「頭部はべたついているのに、頬や腕、脚などの皮膚がかさついているときは要注意です。特に秋から冬の乾燥している時期に生まれた赤ちゃんはアトピー性皮膚炎を発症するリスクが高いので、肌の観察を怠らないようにしてください」と大矢さんはアドバイスします。