【傾向2】使い勝手のよいQUOカードが優待でもらえる!

「株主優待制度を新設する企業が100社あれば、55社がQUOカードだと言っていいほど、優待品をQUOカードにする企業が増えています。自社の製品やサービスが個人投資家向けではない企業などが採用していますね」。

 QUOカードとはセブン-イレブン、ファミリーマートなど全国の主要なコンビニなどで使える商品券のこと。ドラッグストアや書店、ファミレスでも使えるお店があります。「日本全国どこに住んでいても利用できますし、1円単位で使えるので無駄が出ないところもいい。使用期限もないので、優待券の期限切れで悔しい思いをすることもありません。使い勝手が抜群なうえ、もらったQUOカードで買い物をすれば家計を直接助けることにもなりますね」。

【傾向3】多様化する優待ポイント制

 株主優待として品物やサービスではなく、保有株数や年数に応じたポイントを付与する企業も多くあります。「ポイントは企業により、自社製品、食品、電化製品など様々なものに交換できます。数年分のポイントを貯めて高額な商品に交換できるケースもあります」。

 また最近は、IRコンサルティング会社などが運営する、株主優待ポイント制度を導入する企業が増えていると桐谷さん。「例えばウィルズという会社が運営する株主優待サイト『プレミアム優待倶楽部』の場合、保有期間が2年目に入るとポイントが当初の1割増し、3年目になると2割増しになります。ここでも長期保有優遇に対応しているわけです」。さらに特徴的なのが、同じプレミアム優待倶楽部を導入している企業のポイントを合算できる点。「ウェブ上でポイントを共通コインに交換することで合算し、2000点以上の商品の中から好きなものを選べるという仕組みになっています」。合算により、豪華な優待品を狙う楽しみも生まれそうです。

【傾向4】地元の特産品を優待品に

 企業の地元の特産品、名産品を優待品にするところが増えているのも最近の傾向だと桐谷さん。「例えば本多通信工業(6826)は、本社は東京都ですが工場は長野県安曇野市にあることから、500株以上の保有で安曇野産りんごジュースが優待品としてもらえます。地元の美味しい特産品を優待品にすると株主に喜ばれるのはもちろん、それにより特産品の知名度がアップすることで地元からも喜ばれ、よい循環が生まれるようです。ふるさと納税のお礼の品が地元産品の知名度アップにつながるのと似ていますね」。

桐谷さんのノートには、いつどの銘柄をいくらで購入したかがびっしり書き込まれていました!
桐谷さんのノートには、いつどの銘柄をいくらで購入したかがびっしり書き込まれていました!

やっぱり気になる値動き……。優待株とのつきあい方(その1)

 優待株投資を含め、株式投資での最大の悩みは値動きのリスクではないでしょうか。購入した銘柄が値上がりすれば嬉しいのですが、値下がりすると冒頭の漫画のサナエちゃんのママのように落ち込むことも……。とはいえ値動きのリスクは避けられません。どうつきあっていけばいいのか、桐谷さんにポイントを挙げてもらいました。

【Point1】慌てて売るのは危険! 優待株の値動きの傾向を知ろう

「優待株は株主優待制度をやめない限り、大きな暴落はしない傾向にあります」と桐谷さんは話します。ですから値下がりしても優待や配当をもらいながらじっくり待てばOK。最悪なのは慌てて売ることだそうです。下がったところで売ると、損失を確定することになるからです。「そうはいっても初めて買った株が下がるとドキドキするもの。まずは優待株の過去の値動きの傾向を把握したうえで購入しましょう。どんな動きをするのか見当がついていれば、『今下がっているのは仕方がない。しばらく待とう』と冷静に対処できるはずです」。

 優待株の値動きの傾向を知るためのキーワードが「権利確定日」です。優待や配当を受けるには、権利確定日という日までに株主になっている(=株主名簿に株主として記載される)必要があります。株を買ってから株主名簿に名前が記載されるまでには3営業日かかるため、権利確定日の3営業日前に当たる「権利付最終日」という日までに目的の銘柄を購入する必要があります。

「なるべく短期間の保有で優待(+配当)の権利を得ようと考える人が多いため、権利付最終日に向けて優待株は上がり、それが過ぎた翌営業日を権利落ち日になると、優待・配当の権利がなくなった分だけ株価が下がる傾向があります。必ずしもこのとおりに動くわけではありませんが、一つの傾向として知っておくと、権利落ち後に株価がしばらく低迷しても『そういう時期だな』と冷静に受け止められますよ」。

 ただし最近は権利落ち日まで待たずに株価が下がることもあると桐谷さん。「権利落ち日に株価が下がるのを見越した機関投資家がひと足早く売るからです。『権利付最終日は株価が高いはずなのにどうして?』と慌てないでくださいね」。

【Point2】株価が安いときに買う

 値下がりはできるだけ避けたい。そう思うなら株価が安いタイミングのときに買いましょう。「先程お話ししたとおり、権利付最終日直前は株価が高くなりがちなので避けること。権利落ち後は株価は下がる傾向ですが、そこで購入しても次の権利確定日までに間があり(次の権利確定日が半年から1年先の銘柄が多い)優待品がなかなかもらえない。一般的には権利確定日の2~3カ月前に買うのが頃合いでしょうね」。

 ただし値動きの仕方は銘柄により異なるので、株価チャートなどもチェックして安いタイミングを見つけることと桐谷さんはアドバイスします。「前回お話しした総合利回り4%というのも株価が割安であることの目安となります。総合利回り4%の銘柄を買った場合、株価が下がっても利回りが5~6%になったと魅力を感じて買ってくる人がいます。その銘柄が優待をやめない限りは買い値を大きく下回る状況はまず避けられるでしょう」。

【Point3】複数の優待株に分散投資をする

 株価が安いときに買えば、値下がりによる損失はかなり避けられます。しかしそれでも1つの銘柄だけでは限界があります。より値動きのリスクを低くするには、複数の優待銘柄に分散投資をするのが最善策です。「分散投資をすれば、値下がりする銘柄の損失を値上がりする銘柄の利益でカバーできると考えられるので、より安定的に優待投資ができるようになります」。

 いろいろな銘柄を持っていれば、食品、外食、レジャー、QUOカードなどなど優待の楽しみの幅も広がり、家計も大いに助かるはず。「ボーナスが出たときなど余裕資金があるときに少しずつ保有銘柄を増やしていくことをお勧めします」。