薬局では毎回異なる薬剤師が対応する場合も少なくありません。2016年4月から始まった「かかりつけ薬剤師」制度は、患者があらかじめ指名した一人の薬剤師が毎回対応してくれる制度です。

 「かかりつけ医」は健康に関することを何でも相談できる、身近にいて頼りになる医師を指すでしょう。「かかりつけ薬剤師」も考え方は「かかりつけ医」と変わりません。大きく違う点は、「かかりつけ薬剤師」になってもらうには、同意書での契約が必要ということです。薬剤師を指名することで、専属の薬剤師として毎回同じ薬剤師が担当する制度です。

 「かかりつけ薬剤師」を頼むメリットは3つあります。

1、薬を管理してもらえる
一人の薬剤師が服薬状況をまとめて管理してくれるので、飲み合わせや重複の確認をしてもらえる。薬だけでなく、健康食品やサプリ、生活習慣についても確認やアドバイスしてもらえる。

2、薬局が開いてない夜間・休日も薬の相談ができる
24時間いつでも、電話で薬の使い方や副作用、薬に関する相談に応じてもらえる。

3、医療チームのサポートを受けられる
処方内容を確認し、必要に応じて医師への問い合わせや提案をしてもらえる。

 「子どもがアレルギーを持っていたり、薬で下痢などの副作用が出やすかったりする場合でも、いつでも相談できる安心感があります。かかりつけ薬剤師は、研修認定薬剤師を取得した豊富な経験を有する人だけがなれます。すべての薬剤師が対応できるわけではありませんが、通っている薬局で、『この人なら信頼できそう』と感じた薬剤師がいたら、かかりつけ薬剤師になってほしいことを伝えてみてください」


 コロナ下で地域のつながりがさらに希薄になり、子育ての知恵や経験を共有することが難しくなっている今、薬剤師は子育て世代にとって頼れる存在です。

 「今回紹介したような質問事例を通して薬剤師とコミュニケーションのきっかけをつかんでほしいと思います。健康や子育てに関する相談相手として、もっと薬剤師を頼ってください」


伊藤希美さん
薬剤師
伊藤希美 東京大学大学院 薬学系研究科にて修士課程修了後、大手コンサルティング会社に就職。厚生労働省をはじめとする官公庁とともに、 医療保険財政の継続性に関わる研究調査などに携わる。その後、夫の転勤に伴いチェーン薬局へ。薬剤師として店頭業務を経験した後、本社勤務。2018年、薬局を健康情報発信の場にしたいとの思いから、調剤薬局向けサービスの開発・提供を行う会社、カケハシに参画。ユーザー支援業務やコンテンツ制作を担当。

取材・文/中島夕子 イメージ写真/PIXTA