共働き家庭はどうしても子どもと離れる時間が長くなります。そのとき、もし大災害が起こってしまったら……。

考えたくはない未来ですが、想定し、準備しておくことはとても重要なことです。多くの被災されたお母さんたちの経験を踏まえ、「災害に強い地域社会をつくる」というテーマで防災の啓発活動をしているNPO法人ママプラグの冨川万美さんに「共働き家庭の防災対策」について教えてもらいます。今回のテーマは「オーダーメード防災」です。

私たちが「おすすめグッズ」を安直にリストにしない理由

 昨年10月にスタートしたこの防災連載も、今回で最終回。1年間にわたって、共働きのDUAL世代が考えるべき防災についてご紹介してきました。

 9月は防災月間(9月1日が「防災の日」)ですし、「今日から家庭の防災を強化するぞ!」と思い立った方のために、最終回では「わが家だけの防災」の組み立て方についてお伝えしたいと思います。

 前回も触れましたが、各地で防災セミナーを開講すると「おすすめの防災グッズ」や「防災リュックの置き場所」などといった、具体的な質問をされることが非常に多いです。そんなとき、私たちは具体例を紹介することはしますが、リストなどにしてお渡しすることはしません。なぜなら、仮におすすめの防災グッズとして「缶詰めのパン」とリストに記されていたら、本当に必要かどうかは別として「これを防災グッズとして買っておけば大丈夫」と安直に考えてしまう方が多いからです。

 また、防災リュックの置き場所として「玄関先がいいですよ」と話したとして、「防災リュックが玄関先にあると邪魔だし、見栄えも悪い」と感じた人は結局、リュックをクローゼットの奥にしまいこんでしまうかもしれません。

 大切なのは、いいと思ったら一度試してみることです。おすすめというのはあくまでも私の家庭に合うものであって、他のご家庭には全く当てはまらないことも多いのです。

 わが家は、子どもたちがパン好きだったり、玄関先にちょうどリュックを収納できるスペースがあったりするので、そのような目線で防災を進めていますが、他のご家庭もそうとは限りません。その場合は、「缶詰めのパン」や「玄関先」は備えとして正解ではなくなります。

 安くはない金額で防災セットを購入し、いざ使おうと思ったとき、使えるものが少なかったり使い方が分からなかったりしたという体験談も耳にします。防災に誰もが当てはまる正解はほとんどなく、わが家に合ったものでなければ結局意味のない備えになってしまうのです。

 そこで必要になってくるのが「オーダーメード防災」という考え方です。これまで保育園との連携や学校の選び方、夫婦のコミュニケーションなどをテーマに、防災についてお伝えしてきましたが、そのすべての根っこにあるのがこの「オーダーメード防災」なのです。

家族ごとに必要な備えは違う(写真はイメージ)
家族ごとに必要な備えは違う(写真はイメージ)