共働き家庭はどうしても子どもと離れる時間が長くなります。そのとき、もし大災害が起こってしまったら……。

考えたくはない未来ですが、想定し、準備しておくことはとても重要なことです。多くの被災されたお母さんたちの経験を踏まえ、「災害に強い地域社会をつくる」というテーマで防災の啓発活動をしているNPO法人ママプラグの冨川万美さんに「共働き家庭の防災対策」について教えてもらいます。今回のテーマは「オフィスの防災」です。

災害時、家族のそばにいるとは限らない

 この連載で一貫してテーマとしているのは、「愛する家族を守るために自分は何ができるか」ということです。

 家族はパートナーや子どもだけでなく、実家や義実家の両親にきょうだい、親戚、ペットが含まれるという人もいるでしょう。「週末はなるべく家族と一緒に過ごしたい」「年に1回はみんなで旅行に行きたい」など、仕事をする上で「家族」が大きなモチベーションになっていることは間違いないと思います。

 でも、だからと言って、あなたは家族の側に片時も離れずにいられるでしょうか?

 非常事態が起きたとき、必ず家族の手を握ることができるでしょうか?

 答えは残念ながら、そうではない可能性が高いと言わざるを得ません。なぜなら、1日の半分以上は、家族と離れた場所で過ごしているからです。自分だけでなく、パートナーや子どもたちも、会社や保育園、学校などそれぞれの場所でそれぞれの時間を過ごしているはずです。

 これまでの連載でも何度も繰り返してきましたが、「防災」を考えるとき、意外とこの当たり前の状況が、頭から抜けてしまっているように感じます。漫然と、「うちは大丈夫」と思われている人が多い気がしてならないのです。

 しかし、万が一のときに家族の手を握れなかったとして、悲嘆に暮れるべきなのかといえば、全くそんなことはありません。それぞれが、自分で自分の命を守ればいいのです。