「備蓄」できるものは「食べる喜びを感じられない」ジレンマが

 実際に、ママプラグのスタッフで極寒の2月に防災ピクニックを行ったことがあります。寒空の下、風の強い河川敷まで行き、厳しい環境下ではどんな非常食をおいしいと感じるのか、試してみたかったのです。

 パスタや缶詰、レトルトやお菓子など、いろいろと試食した結果、全員が「あー生き返る!」と口にしたのは、ポットに入れた温かいお茶でした。極寒の状況下では、その他の食事はほとんど味が感じられなかったのです。

 先のご夫婦と同じ立場で意見を言うつもりはありません。しかしながら、「温かい食事」のありがたさを知るという意味では、意義のある経験でした。言葉の通り、温かい食事には、生きていることを実感する力があるといっても過言ではないでしょう。

 ですので、防災食でもなるべく「温かい食事」であることが大事なのだということを念頭に置いてください。その上で、災害時の食事を分類すると、大きく3つあります。

(1) 常温保存でき、そのまま食べられるもの(カンパン、クラッカー、缶詰、ドライフルーツなど)
(2) 常温保存でき、加熱または加水してから食べられるもの(アルファ化米、インスタントラーメン、レトルト食品など)
(3) 常温保存が効かず、加熱してから食べられるもの(冷蔵庫の中身、冷凍食材など)

 まず、(1)ですが、非常食としていわゆるなじみの深い「備蓄できる」食品類です。販売されている防災セットをのぞいてみると、この(1)が入っていることが多いでしょう。

 確かに、いざという時の栄養源になるので、備蓄を考えるときに外すことはできません。ただし、(1)には大きな注意点があります。「食べる喜びを感じられない」「子どもが食べてくれない」ものが多いという点です。

 特に、防災食を「子どもが食べてくれない」という問題は、私たちが防災事業を始めたきっかけとも言えます。

 実際、カンパンを備えていたご家庭で、災害発生時に、3歳の子どもが一切カンパンを口にしてくれなかったというご家庭がありました。

 考えてみればそうですよね。戦後間もない頃の食糧事情であればともかく、ペットでさえ、栄養たっぷりのターキー缶や仔牛のフィレなどと書かれたエサを食べている時代に、カンパン数枚で腹を満たせと言われても、拒否されるのは当たり前かもしれません。

 実際、わが家の娘も3歳の頃、カンパンを食べてすぐに「牛乳ちょうだい」と言いました。災害時には貴重な水分を過剰に欲しがるだろうと思ったので、わが家の防災食リストからカンパンは外れました。

 防災セットを購入されている場合は、一度中を見てみてください。(1)の中でも、自分は食べられるものなのか、家族はどうなのか、調べてみましょう。