静岡県沼津市にある器と雑貨の小さなお店「hal」。休日ともなると、全国からはるばる訪れる人がいるほどの人気店です。店主の名は後藤由紀子さん。26歳のときに結婚。28歳で長男、30歳で長女を出産し、専業主婦から雑貨店をオープンしてまもなく17年目を迎えます。子育てに軸を置きながらスタートした共働き生活の思い出や、自分自身で決めたルール、子どもたちの思春期をどう乗り越えたかなどを聞きました。

 後藤さんのお店に並ぶのは、自分の感性で丁寧に吟味した品々ばかり。店づくりをする上で、参考になったのは、高校卒業後、上京して働いていた東京の雑貨店「ファーマーズテーブル」での経験です。

 「沼津にいる頃から服や雑貨が好きで、東京に出てきてからは雑貨店やカフェ巡りばかり。夜間の学校に通いながらスタイリストの勉強もしていました。いつかは、そういう好きなことを仕事にしたいと夢見ていました」と、後藤さんは10代の頃を振り返ります。

 1985年、表参道同潤会アパートにオープンした「ファーマーズテーブル」は、そんな後藤さんの心を魅了するお店でした。店主・石川博子さんのセンスが細部にまで光るモノ選びやディスプレー。何もかもが輝いて見えた憧れの店で、後藤さんはアルバイトとして働くことになります。

 「博子さんはセンスが素晴らしくて、ちょっと商品の角度を手直しするだけで、ディスプレーがぐっと良くなる。『ものが生きているように見える』ようになるんです。ファーマーズテーブルでは、そんなことをたくさん見させてもらいました」

小さな頃から夢はお母さんになること

 東京での生活は6年間。その後、沼津に戻り、しばらくして結婚。子宝にも恵まれ、子育てを楽しむ日々が始まります。

 「小さい頃から夢はお母さんになること。高校生のときに、将来生まれてくる娘の名前を考えていたほど、子育てに憧れていました(笑)」と後藤さん。

 最初の子どもは男の子。子どもとの時間を楽しめたと言いますが、穏やかな日々も、二人目の長女の妊娠・出産で一変。

 「二人目は妊娠中のつわりがひどくて、出産してからも年の近い子どもが二人になったことで、てんやわんやに。一人が泣くと、もう一人も泣き出すという感じで、まるで双子を育てているみたいでした」

 愛情と時間をたっぷりかけて、自分の手で子育てをしたい。慌ただしいけれど、かわいい盛りの子どもたちとの日々が流れていきました。

 そんな後藤さんが、雑貨店を開く決断をしたのは、立て続けに起きた自身と長女の病気がきっかけだったと言います。

家族4人の時間を優先して、にぎやかに子育てをしていた日々
家族4人の時間を優先して、にぎやかに子育てをしていた日々

次ページから読める内容

  • 「いつかやりたい」の「いつか」が来るとは限らない
  • 「家族の時間」優先で店と両立の日々
  • 母ではない自分の居場所が店
  • 赤字が出たらやめると約束するも開店以来16年連続で黒字
  • 親が先回りして子どもの道をつくらない
  • 娘の反抗期に、お風呂で一人泣くことも
  • 子育て後に待っていた、自由な時間の楽しさ

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