「リサイクル」ならぬ「アップサイクル」として注目集める

 島津さんの活動は、「アップサイクル」としても注目を集めています。アップサイクルとは、「要らなくなったもの」にデザインなどの力を借りて新たな価値を込め、「大切なもの」に生まれ変わらせる、リサイクルの一歩先をいくもの。段ボールが、おしゃれでみんなが欲しいと思うような財布に変身するというのは、まさにアップサイクルの好例といえます。

僕自身はただ、段ボールが大好きで、それが財布になることでみんなから愛されるようになることがうれしい、という気持ちでやってきただけで。これがアップサイクルだというのは、後から人に言われて気づきました

 ただ、要らないガラクタだと思っていたものが、みんなをワクワクさせたり、喜ばせたりできるということが、他の誰かにとって何かのヒントになるなら、本当にうれしいですね」

 島津さんが、あちこちを飛び回り、精力的にワークショップを行っているのも、段ボールの魅力についてもっと大勢の人たちに知ってもらいたいという思いがあるから。実際、ワークショップに参加した人たちは、段ボールの財布が出来上がると誰もが満足げな笑顔をみせています。

全国を飛び回り、精力的にワークショップを開催している。写真は2018年8月、東京・世田谷ものづくり学校で開催された子ども向けワークショップの様子。「自分でつくる喜びや、できあがったものへの感動を子どもたちに体験してもらえることがうれしいですね」と島津さん
全国を飛び回り、精力的にワークショップを開催している。写真は2018年8月、東京・世田谷ものづくり学校で開催された子ども向けワークショップの様子。「自分でつくる喜びや、できあがったものへの感動を子どもたちに体験してもらえることがうれしいですね」と島津さん

 「さっきまでゴミだったはずの段ボールから、こんなすてきな財布ができるんだ、という感動を味わってもらえる。それが僕にとっても幸せな瞬間です」

 段ボールが紡いできたストーリー。それは財布へと形を変えて、また新たな物語につながっていきます。

(取材・文/工藤千秋、写真/回里純子)

島津冬樹
しまづ・ふゆき
島津冬樹(しまづ・ふゆき) 1987年、神奈川県生まれ。2012年多摩美術大学情報デザイン学科卒業。2015年、広告代理店を経てアーティストヘ。「不要なものから大切なものへ」をコンセプトに、2009年より路上や店先で放置されている段ボールから、財布を作るCartonをスタート。日本のみならず、世界30カ国を周り、段ボールを集めては財布を作ったり、コレクションをしたりしている。国内外での展示やワークショップも多数開催している
(c)2018 pictures dept. All Rights Reserved
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・『旅するダンボール』オフィシャルサイト http://carton-movie.com/
(2018年12月7日よりYEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリーほか全国順次公開)

・島津さんのオフィシャルサイト「Carton」 http://carton-f.com/

※本コラムは、『日経DUAL』と、日経BP社が発行する無料のリクエストマガジン『ecomom(エコマム)』との共同企画でお届けします。『ecomom』2018年冬号(12月1日発行)では、島津さんが子ども向けに開催したワークショップの様子をご紹介しています。

『ecomom』とは
日経BP社が発行する無料のリクエストマガジン。“家族と自然にやさしい暮らし”をテーマに、自宅まで直接雑誌をお送りしています。2005年に創刊し、2018年冬号は12月1日に発行しました。

◆『ecomom』のご紹介ページ(誌面の見本もご覧いただけます)
https://business.nikkeibp.co.jp/atclmom/ecomom/15/060200002/