マジシャンからデザインの道へ、方向転換

 中学から高校にかけてはマジックにのめり込み、毎週、マジックサークルに通いつめるほどに。メキメキと腕前が上達し、発表会や老人ホーム巡りなどでマジックを披露していたこともあります。「当時は将来、ディーラーマジシャンになるんだ、と真剣に考えていました」

 そのままマジシャンになるのかと思いきや、あるとき、ふと「マジックでは食べていけないんじゃないか」と気がついたといいます。すでに高校3年生。これからの進路の選択をもう一度考え直したときに、ものづくりやデザインの道に進もうと決断。2浪をして美大に進学した後の展開は、冒頭で話した通りです。

 映画では、市場で見つけたじゃがいもの段ボールのルーツを探す旅を軸に、米国や国内のキャンプ場でワークショップを開催したり、中国の環境イベントに登壇したりする様子も描かれます。

 島津さんが映画の中で見つけ、作られるまでのストーリーを追いかけたじゃがいもの段ボールは、20年以上も前に地方の制作会社で働く無名のデザイナーがデザインしたもの。その温かみのある書体や懐かしいイラストが、島津さんの心を捉えます。

映画の中で、島津さんが魅了されたじゃがいもの段ボール。温かみのある書体や懐かしいイラストが、島津さんの心を捉えた。(c) Carton
映画の中で、島津さんが魅了されたじゃがいもの段ボール。温かみのある書体や懐かしいイラストが、島津さんの心を捉えた。(c) Carton

 「段ボールのデザインは1980年代のままのものが多いんです。段ボールに限らずパッケージデザインというのは、時代を色濃く反映しているもの。今ではなかなかお目にかかれないような昔ながらの温かみ、懐かしさを見つけられるのが段ボールのデザインの魅力になっています」

 また、その温かさの向こうには、段ボールの物語が広がっている、と島津さんは言います。

 「農家や工場で商品を入れて、届けられて、誰かの笑顔が広がる。そこに段ボールが見てきた物語があると思うんですよね。それを想像することが楽しいんです」