20代後半に人気ショップの店長として活躍した後、結婚を機に退職した桜井かおりさん。出産後、自身のカフェを開業しますが、2人の子どもが幼い頃はワンオペで夫に対してイライラした気持ちがあったと言います。その気持ちをどのように乗り越えたのでしょうか。共働きの意識が今とは異なる20年前の話ですが、共働き夫婦にありがちな不平等感や気持ちの折り合いの付け方は、子育て真っ最中の今の親にも参考になるはずです。

桜井 かおりさん
「カフェ ロッタ」オーナー
大手損保会社勤務を経て、東京・代官山「クリスマスカンパニー」でアルバイトとして勤務。その後系列店のテディベア専門店「Cuddly Brown」で店長を任され、英国や米国で買い付けなども経験する。退職後、2人の子どもを出産。2001年に「カフェ ロッタ」を東京・世田谷にある松陰神社通り商店街にオープン。自分らしさを大切にした店づくりで多くのファンを獲得する。2021年9月、再開発のため閉店予定。著書に『カフェロッタのことと、わたしのこと』(旭屋出版)。

「私だけの店を持ちたい」とカフェをオープン

 東京・世田谷の松陰神社通り商店街にある10席ほどの小さな店「カフェ ロッタ(以下、ロッタ)」。平日でも1~2時間待ちは当たり前で、遠方からわざわざ訪れるファンもいるほどの人気カフェです。店内には、パリや雑貨が大好きなオーナー、桜井かおりさんのこだわりがたっぷり。ウィリアム・モリスの花柄の壁紙、パリののみの市で手に入れた小さなぬいぐるみ。棚にさりげなく飾ったかごやオープンキッチンに並ぶ食器にも、桜井さんらしいセンスがつまっています。

 桜井かおりさんがロッタをオープンしたのは、20年前の37歳のとき。4歳の長男、そして生まれてまだ間もない8カ月の次男の子育てまっただ中でした。

 「独身の頃は『クリスマスカンパニー』やテディベア専門店の『CUDDLY BROWN』の店長などを務めていて、仕事が楽しくて仕方がありませんでした。結婚を機に仕事を辞めて、半年で長男を妊娠。子育てに専念しましたが、カフェ経営者として楽しそうに働く夫がうらやましかったんです。私も『また仕事がしたい』という気持ちがずっとありました」

 桜井さんの夫はロッタがオープンする前からその近所で「カフェ アンジェリーナ」を経営するオーナーシェフです。店の営業は深夜2時までで帰宅は早朝、土日も出勤という仕事中心の毎日を過ごしていました。

 「夫にとっては、店のアンジェリーナが一番の子どもで、家族はその次。そんな夫を見ているうちに、私も自分の店を持つことを考えるようになりました」と桜井さん。

 長男を出産後に一度、カフェのオープンを計画しましたが、頓挫。カフェをやるのは、もう1人子どもを産んでからと計画を練り直し、次男を出産後、ロッタのオープンに向け走り出します。外観や内装にも「自分の好き」にこだわった、小さいけれど桜井さんらしいカフェができあがりました。オープンから3年後、当時まだ珍しかったラテアートをほどこしたカフェオレが雑誌で紹介されたことをきっかけに、東京でも有数の人気店となっていきます。

東京・世田谷の松陰神社通り商店街にある「カフェ ロッタ」
東京・世田谷の松陰神社通り商店街にある「カフェ ロッタ」