2021年4月22日に開催された「日経ビジネス課長塾オンデマンド」オープン記念セミナーでは、「ダイバーシティ経営」をテーマにサイボウズ代表・青野慶久さんと日経xwoman編集委員・羽生祥子の対談が行われました。その中から、「ダイバーシティ(多様性)で働く」「社員自らが自分の働き方を決める」など、これからの働き方について語り合った内容を一部抜粋してご紹介します。

オンラインで実施された「日経ビジネス課長塾オンデマンド」オープン記念セミナー。左からサイボウズ代表取締役社長・青野慶久さん、日経xwoman編集委員・羽生祥子
オンラインで実施された「日経ビジネス課長塾オンデマンド」オープン記念セミナー。左からサイボウズ代表取締役社長・青野慶久さん、日経xwoman編集委員・羽生祥子

青野慶久(あおの・よしひさ)さん
サイボウズ代表取締役社長。松下電工(現パナソニック)を経て1997年にサイボウズを設立。2005年代表取締役社長に就任。社内のワークスタイルを変革、3児の父として3度の育児休業を取得。著書に『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)など。

サイボウズって、こんな会社

「働きがいを手に入れる」のは、SDGsの目標のひとつです。コロナ禍以前から、今では当たり前となっているリモートワークを積極的に導入したり、ダイバーシティな働き方を取り入れたりと、働き方改革の先頭を走ってきたのがサイボウズです。同社では社長自ら3人の子どもの育休取得や時短勤務を経験したり、社員の子連れ出勤もOKとするなど、子育て社員の働きやすさを実現してきました。性別や国籍、障がいのあるなしにとらわれず、「誰もが働きやすいであろう会社」の姿は、これから私たちが目指す新しい働き方の指針といえます。多くの企業がダイバーシティを模索する中で、働く側の私たちもこれから「どう働くか」を自ら考えていくことが求められそうです。

(1)新卒1年目で取締役に! 社内公募で17人の取締役を選出
2021年3月に選出された取締役17人は、全員社内公募で立候補した社員です。そのなかには、新卒1年目(就任時)の社員も。「すべての議論が社内でオープンなので、社員全員が取締役の役割を担っている」というのが社内公募の理由です。

オンラインで行われた取締役会。社内公募で決まった17人が顔をそろえた
オンラインで行われた取締役会。社内公募で決まった17人が顔をそろえた
(2)社長自ら子ども3人の育休・時短勤務! 「働き方」は自分で選ぶ
男性の育児休業取得促進を目的に、2022年4月から育休取得の周知が企業で義務化。サイボウズでは、社長である青野さん自ら、3度の育休・時短勤務を経験。社内では男性社員も当たり前のように育休を取得しています。子育て、介護や副業、地方移住なども含めて、「自分のライフスタイルにベストな働き方」を選択、実現しています。

3児の父として、しっかり子育てもする青野さん
3児の父として、しっかり子育てもする青野さん

情報のオープンと社員の自立はセット

日経xwoman編集委員 羽生祥子(以下、――) サイボウズが取締役を社内公募したというニュースには驚きました。最初に社内で告知したときの反応は、どうだったんですか?

サイボウズ代表取締役社長 青野慶久さん(以下、青野) 驚いてはいましたが、すぐに自然と受け入れられていましたね。もともとサイボウズでは社内の情報共有を徹底しています。背景には、密室の取締役会も、偉いだけの取締役もあえて必要としていない、というのがあります。

―― 社内でオープンに共有しているのは、どういう情報ですか。

青野 プライバシーとインサイダーを除き全部です。経営会議もそうですし、他部署の会議に参加することもできます。その会議のスレッドで自由に発言することも可能です。

―― 一般社員が経営会議に参加して、発言もできるんですか!

青野 それがサイボウズでは普通なんです。「半沢直樹」のドラマみたいに、人事部が暗躍して経営や人事が決まっていくというのは、ありえません(笑)。

―― 経営陣にもどんどん意見を言えるのは、「心理的安全性」がきちんと確保されているからできることだと思います。どんな意見を言っても「懲罰人事」は存在しないということですね。

青野 人事権は私にもありませんから(笑)。人事は、基本的に本人の希望制で、会社から一方的に異動を言い渡すことはありません

―― そうすると、ずっと同じ部署にいるのも、興味がある他部署に異動するのも、本人の自己申告ということですか?

青野 異動には、受け入れ先部署の同意が必要ですが、基本的に本人がやりたい仕事を会社は応援するという姿勢です。その代わり、自分で自分の人生やキャリアを考えてプランニングする姿勢が必要となります。「自立的な社員」であることは、サイボウズでは常に求められていますね。

―― 情報がオープンな分、社員として受け身で待つのではなく、自立して自分の働き方や生き方、会社のあり方を考えていくということですね。そちらのほうが、むしろハードルが高いのかもしれません。

青野 オープンな情報の例でいうと、僕の経費も、社員の誰もがいつでも見られるようになっています。

―― 社長の経費まで、全社員が知っているんですか? そういう環境ならば、確かに取締役の「取締」という文字はサイボウズには不要になりますね。

青野 全社員が会社、そして、それぞれの社員をちゃんと見ているし、情報も知っている。つまり、会社を取り締まる役割は、社員全員で担っているということです。