互いが議論を重ねられる「共通言語」をトレーニング

―― 普通の企業に比べると、かなり先にいるのがサイボウズといえます。今、こういう組織カルチャーがあるのも、10年、15年かけて、多様性や働くマインドについて試行錯誤してきた結果だと思います。

青野 これまで社内の働きやすい環境づくりの具体的な施策をしてこなかった企業が、いきなり取締役の社内公募をしても無理でしょうね。多様性のカルチャーをつくるには、まずは情報を徹底的にオープンにして、社内で共有することが必要です。

 そのうえで、ダイバーシティと自立をセットで考えていかなくてはなりません。与えられたルールに従うのは窮屈な分、ある意味、楽なんです。逆に、たくさんの選択肢から自分で選ぶ責任がある、つまり自立的な社員であるということは、結構ハードなことだと思います。例えば、サイボウズでは、誰でも社長である私に意見をして、経営戦略をひっくり返すことも可能です。その代わり、意見をして戦略を変えさせるための知識、思考力、表現力が必要になってきます。

サイボウズでは「ダイバーシティと社員の自立はセット」という企業マインドが浸透
サイボウズでは「ダイバーシティと社員の自立はセット」という企業マインドが浸透

―― そういう能力を鍛えるために、何か社内のトレーニングのようなものをやっているんですか?

青野 新入社員も入社3日目から研修を受ける「問題解決メソッド」というフレームワークがあります。相手と意見が違うときに、なぜ違うのか、そこからどうするかを建設的に表現するフレームワークで、議論するうえでの共通言語となっています。

 例えば、「あなたの現実は何ですか。私の現実はこうです」「それに対するあなたの理想は何ですか。私の理想はこうです」「お互いの違いに対して、どんな原因と課題を設定しますか」──。相手を言い負かして攻撃するのではなく、違いを認め合いながら議論を行うスキルを全社員が習得しています。

―― 日本人は議論が苦手ですが、それを建設的にするために互いが議論を重ねられる社内の「共通言語」となっているんですね。

青野 同じメソッドで議論すれば、お互いの意見が違っても、なせ意見が分かれるかが見えてきます。どちらかが正しいとか、相手を叩きのめすというような不毛な議論にはなりません。相手と意見が違うのは自然なこと。ただ、違うままではキツイので、何が違うかをはっきりさせ、互いが学び合いながら新しい課題を探していきます。