カレーの鍋を洗うところまでやって、夫と妻はフィフティ・フィフティ

 「そんなこともあったので、夫は、自分は育児家事をやっている父親だという自負があったんでしょうね。でもね、最初の頃はやっぱり私と夫はフィフティ・フィフティとは言えなかった。それにもイライラすることが多かったですね」

 いくら保育園の送り迎えをしてくれても、子どもが熱を出せば、仕事のスケジュールを組み直したり、子守をしてくれる実母を呼ぶのは、いつも大平さん。大平さんの帰宅が遅いとき、子どもたちに食事を食べさせてお皿を洗ってくれても、カレーの鍋は水につけておしまい。

 「『お皿、洗ってあるから』って自慢げに言われるんですが、『ちょっと待って!水につけてあるカレーの鍋を洗うのは一体、誰?』って(笑)。カレーでドロドロの鍋もきれいに洗うところまでやって、本当のフィフティ・フィフティでしょ、と。そんな言い争いを重ねながら、彼自身も男女平等について学んだりして、ずいぶん意識が変わっていきましたけどね。今では、カレーの鍋もちゃんと洗ってくれるようになりました」

子どもたちがそれぞれ自立。育児が終了するのは突然だった

 これまで7回の引っ越しを繰り返してきたという引っ越し魔の大平さん。どの家に住んでも、リビングの中央に置かれていたのは、大きな丸いちゃぶ台です。ここで子どもたちとワイワイ騒ぎながら食卓を囲んでいた日々も、今では懐かしい思い出です。それぞれがバラバラの時間を過ごすようになり、家族でちゃぶ台を囲む機会も少なくなりました。

 そして、この春、第1子の長男が婚約。新居も決め、大平さんの手から巣立っていこうとしています。一緒に暮らす長女も、大学生活とバイト、そして演劇と、夢中になることを見つけて自分の道を歩みだしています。

 「ここ数年、ようやく、『ああ、私も本物のお母さんになれたかな』と感じていたんですけど、そう思ったときには、子育てが終わってるものなんですね」と、大平さんはちょっと寂しそうに笑います。

 あんなに小さくて、いつも大平さんに手を差し出して抱きついてきた子どもたち。右往左往しながら、必死になって一生懸命育ててきた時間。それがこんなに早く終わってしまうなんて──。「子育てって、もっと徐々に手が離れて終わっていくものだと思っていたから、あまりにも突然終了しちゃって、なんだかすごくせつない感じ。特に、長男は初めての子どもだから、結婚して独立するのはうれしいけれど、寂しさもひとしおなのかもしれません」

大平家の家族の時間を象徴するのが、この大きな丸いちゃぶ台。「家族4人で大騒ぎしながら食事をしていた時間は、大切なひとときでした」