子どもの頃の旅が長男の夢のきっかけに

 子どもたちにとっても、旅は多くの経験をプレゼントしてくれました。小学生の頃から「国連で途上国を支援する仕事をしたい」という夢を抱き、その実現に向けて今、途上国支援の仕事に就く長男。夢のきっかけは、小5のときのバリ島旅行で見た光景にありました

 自分と同い年くらいの子どもが物乞いをしている姿を見たときに、「どうしてこういう格差が生まれるんだろう。大人になったら、その格差をなくすような仕事をしたい」と感じたというのです。

 就職活動のエントリーシートの志望動機にそんな文章を見つけた大平さん。 「あ、と思って本人に聞いてみたら、『そうだよ。あの旅で格差の存在に気付かされたんだよ』って。親は、旅から子どもたちとのふれあいの時間をもらいましたが、子どもも目に見えない何かをもらっていたんだな、と。私たちは財産は残せないけど、そういう旅の経験を残せたんだと思えて、うれしかったですね」

1日の限られた時間でも、親子の時間を大切に

 家族それぞれに経験や思いをプレゼントしてくれた旅。

 「別に家族で旅をすればいい、というものでもないんです。あのとき、ああやって一緒に過ごした旅の時間が、日常の大切さを教えてくれたところがあります」

 旅から帰国すれば、また時間に追われる日々がスタート。それでも、ずっと子どもたちといた旅の時間があったから、1日という短い時間でも、一緒にいる間は楽しく大切に過ごそうと思えるようになったといいます。

 「もちろん、イライラしちゃうことだってたくさんありますよ。朝の支度が遅いとか、部屋を散らかしっぱなしとか。私なんて、子どもとケンカして、思わず壁にニンジンを投げつけたことだってありますからね(笑)。

 でも、保育園が終わってから寝るまでの3時間しか一緒にいられなくても、その3時間の価値がわかっていれば、親子の過ごし方が変わってくると思うんです

取材・文/工藤千秋 写真提供/大平一枝

大平一枝(おおだいら・かずえ)
大平一枝(おおだいら・かずえ) ライター、作家。長野県生まれ。編集プロダクションを経て、1995年ライターとして独立。失われつつあるが失ってはいけないもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『男と女の台所』(平凡社)、『届かなかった手紙』(KADOKAWA)、『あの人の宝物』、『紙さまの話』(ともに誠文堂新光社)、『昭和式もめない会話帖』(中央公論新社)ほか。最新刊は『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)。『東京の台所』(写真/文 朝日新聞デジタル&w)連載中。オフィシャルホームページ「暮らしの柄」インスタグラムツイッターでも発信している。

※本コラムは、『日経DUAL』と、日経BPが発行する無料のリクエストマガジン『ecomom(エコマム)』との共同企画でお届けします。大平一枝さんのインタビューは『ecomom』2019年夏号(6月28日発行)でもお読みいただけます。また、大平さんの著書『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』を『ecomom』2019年夏号で3名様にプレゼントさせていただきます。『ecomom』を入手するには下記よりご登録ください(配送料、購読料無料)。

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