子どもが生まれたら、その日からお母さん。自分なりの憧れや理想とともに子育てが始まります。でも、子育てなんて、思った通りになんか、全然うまくいかないもの。落ち込んだり、不安になることの連続です。周りがみんな素敵で、立派なお母さんに見えたりしませんか? そんなふうに子育てに悩むママたちに、エールを送るのが文筆家の大平一枝(おおだいら・かずえ)さんです。ワーママの大先輩でもある大平さん自身の子育て、「イクメン」という言葉が生まれる前の夫との共働きどのようであったのか、話を聞きました。上下編でお送りします。

(上) 家族旅がきっかけで、国際援助の仕事に就いた長男 ←今回はココ
(下) ワンオペ続きの夜、今すぐ帰ってと夫に電話した

最初から完璧な母親じゃなくてもいい

 「お母さんって、各駅停車でだんだんと本物のお母さんになっていくもの。最初から完璧なお母さんでいようと思わなくても大丈夫」

 そう語る大平さんはエッセー『新米母は各駅停車でだんだんと本物の母になっていく 母業23年つれづれ日記』で、子育てに向き合った日々を心に染み入るような言葉でつづっています。

 大平さんは、映画プロデューサーの夫と29歳で結婚。翌年、30歳で出産した長男は現在、社会人2年目、4つ違いの長女は大学2年生になりました。 子どもたちが自立の道を歩み始めた今、必死で駆け抜けた子育ての日々は、せつなく、いとおしさにあふれていると言います。

築50年の古民家で賑やかに暮らしていたときに、庭で撮影した家族4人の写真。「長男も長女もサッカーに夢中でした」
築50年の古民家で賑やかに暮らしていたときに、庭で撮影した家族4人の写真。「長男も長女もサッカーに夢中でした」