3人のお子さんといつもポジティブに向き合い、ベストセラーとなった『ポジティブの教科書』や、その子育て版と言えるポジティブな子育て本『怒らない子育て』を出版している書道家の武田双雲さんによる人気連載。3回目である今回は、双雲流ポジティブ子育てを実行に移すための具体的なアクションの取り方について伺いました。自分がイイ感じの時の表情や姿勢、呼吸などの感覚をマインドセットすることがポイントだそうです。

子どもをただただ愛おしいと思う感覚が出発点

日経DUAL編集部(以下、——) ここまで伺ってきたお話を整理すると、双雲流ポジティブ子育ての根幹にあるのは「子どもへのリスペクト」であると感じるのですが、いかがでしょうか。

武田双雲さん(以下、敬称略) それもありますし、あとは感動ですよね。子どもの存在そのものに感動するということ。子どもに対してだけでなく、僕は自分自身にも感動していますから。自分の存在や自分の一つ一つの細胞にも感動して生きています。

 茶道の話になりますが、すてきな器が目の前に出てきたらジーッと見ちゃうじゃないですか。僕の子どもたちに対する向き合い方は、そんな感覚に近いのかもしれません。ただただ、子どもたちをいとおしむ感覚だけ。すべてがそこからスタートしていると思います。

 とはいえ、子育てにおいて、子どもの成績をもっと良くしたいというような、親として湧き上がる野心や目標、夢を持つことを否定するつもりはありません。何て言えばいいでしょうか……。僕はたまたま人間社会にいないだけで、宇宙人の世界に生きているような感じなんですよ(笑)。講演会などでもついつい、「人間って面白くないですか?」などと言ってしまって、笑われちゃったりするんですけどね。

—— 人間としての自覚があまりないということでしょうか!?(笑)

武田 独自の感覚で人や物事を見ているということかもしれませんね(笑)。たまに、「人間の方々」なんて言っちゃったりしてしまいますから。

「僕は自分の存在や自分のひとつひとつの細胞にも感動して生きています」と話す武田双雲さん
「僕は自分の存在や自分のひとつひとつの細胞にも感動して生きています」と話す武田双雲さん

 まあ、それはいいとして、人間は脳というOSのプログラムによって動いていて、脳からの指令は自律神経や運動神経、感覚神経やホルモン分泌などを通して下されるわけなのですが、その指令の流れのパターンは人それぞれ。とはいえ、そのパターンの数は思ったよりも多くなくて、人間の思考や言動は、一定のパターンを繰り返しているだけです。だから、その人が発している言葉や表情を観察すれば、何となくその人固有のパターンが見えてくる。その人の人生も垣間見えるような気がしています。

 逆にいうと、脳のOSのプログラムをちょっと変更するだけで、思考や言動のパターンは変わってくるということです。それによって、人生はいい方向にも悪い方向にも向かうようになります

 例えば、子どもへの声がけ一つにしても、「どうせ勉強してないんだから、しなさい!」と脅し続けている親と、「勉強って本当に楽しいよね!」と好き好きオーラ全開にしている親とでは、その子どもの脳のOSに組み込まれるプログラムは大きく違ってきます。子どもが勉強好きになるのも、勉強嫌いになるのも、親の声掛け次第ということができます。

 これは、お金に関しても同じです。お金の話をするときに「お金って使い方を間違えると怖い」と話すのか、「お金ってありがたい」と話すのか。お金ってありがたいものだとポジティブに捉えた子どもはお金と縁がある人生を送れるでしょうし、ネガティブに捉えた子どもはお金との縁が良縁にならない人生を歩むということになりがちです。