人が言葉に発したり、考えたりしたことは現実になりやすい

—— 子育てにおいても、声がけをポジティブにするのかネガティブにするのかで、結果は大きく変わってくるということですね。

武田 そうだと思います。ただただ、いとおしむようにポジティブに声がけをしていると、その部分が必ず伸びていきます。感情や思考は目には見えませんが、エネルギーを持っており、エネルギーは現実のものとなります。不安が的中しやすいのと同様に、人が言葉に発したり、考えたりしたことは現実になりやすい、ということです。

 「うちの子はどうせ勉強をしていないだろう」と決めつけて、「勉強しなさい!」とうるさく言うと、その子は確実に勉強が嫌いになり、本当に勉強をしない子どもになります。言霊と同じで、考えたことは現実になるのです。

 だから、子どもが勉強していないなどと疑うことをせず、ただ「勉強って楽しいよね」と声がけをしていれば、子どもは勉強する子になります。これはもう、「夢幻泡影(むげんほうよう)」(人生は夢や幻、泡や影のようにはかないものであること)とか、「色即是空(しきそくぜくう)」(この世のすべてのものは固有の本質を持っていないという意味の仏教の基本的な教義)の世界ですね。

「自分が教育する」という発想は捨てるべき

—— 考えたことが現実になってしまうのであれば、子育てにおいては、親がどう考えるかが非常に大切になるということですね。

武田 その通りです。「子どもは、親が言わないと自分からは何もやらない」と考えれば、それが現実化する。すると、「自分がしっかり教育しなければ」と、ますますガミガミ言うようになってしまう。そこが大きな問題。わが子を「自分が教育する」という発想は捨てたほうがいいと思います。

 例えば、書道教室に「子どもというものは、お手本をちゃんと見ないものだ」と考えているネガティブ思考の先生がいるとします。そういう先生はたいてい、子どもたちに「ちゃんとお手本を見なさい!」とガミガミ言うのですが、そんなにうるさく言わなくても、子どもは絶対にお手本を見ています。「見ていない」と決め付けるのではなく、「ほんの少しでも見ている時間もある」という視点で子どもを観察するようになれば、実際に子どもがお手本を見ているところが目に入るようになる。そこですかさず「おっ! ちゃんとお手本を見てるね!」などと声がけをすると、子どもはますます、しっかりお手本を見るようになるんです。僕はいつもポジティブな声がけしかしないので、ウチの生徒さんたちは僕が何も言わなくても、お手本をしっかり見るんですよね(笑)。このことは、子育てのあらゆる場面において応用できるのではないでしょうか。

 会社の経営においても同じことが言えると思います。「私は何にもしていないんですけど、社員が優秀だから、どんどん会社の利益が上がっちゃうんですよ」という社長さんに、僕はこれまでたくさん会ってきました。そういう経営者の下では社員が勝手に育っていくので、経営者は特に苦労もせず、順調に業績が上がっていきます。苦労をしていないので、あまりメディアで取り上げられることはありません。メディアで注目されるのは、常に利益を上げるために苦労しながら闘い続けているような人ばかりです。しかし、メディアには取り上げられないけれど、うまくやっている経営者はたくさんいるわけです。