「未来のこと」は忘れよう

武田 単純に言えば、「未来のことを忘れる」ということ。「今、勉強しておけば、将来、年収が高くなるはず」といった「未来志向」を一旦やめて、今、目の前にある分子の塊同士、細胞の塊同士の有機的なつながりに愛を感じるというか……。愛を感じてイチャつくだけでいいんですよ。「いやん、ばかん!」的な、ラブラブカップルの世界でいいんです(笑)。

 何が言いたいのかというと「判断し過ぎない」ということ。「この子はこうだろう」とか、「この子はココが優れている」「ココが劣っている」といったような、前頭葉的なジャッジを一回捨てて、ただただ、動物的な愛情だけでわが子を育てるといった思い。「一緒にいるだけで愛おしい」と思うだけでいいと思います。わが子を愛おしむだけでいい。

「親は子どものことを判断し過ぎる。わが子をただ愛おしいと感じる気持ちが大切(写真はイメージ)
「親は子どものことを判断し過ぎる。わが子をただ愛おしいと感じる気持ちが大切(写真はイメージ)

 僕の仕事である書道の世界に例えると、「今、自分が持っているこの筆」が素晴らしいとか素晴らしくないとかは一切判断しない。高いか安いかもどうでもいい。今、この筆を使っているわけですから、「ただただ、いとおしい」と思いながら筆を持つようにすれば、不思議と筆は割れないし、思い通りに書けるものです。

 例えば、勉強しないわが子を見たときに、「本来こうあるべき(勉強すべき)」というイメージと、「勉強していない子どもの姿」の間にギャップを感じて怒ってしまいそうになったとします。親は、勉強しているか否か、パッと見で判断しているだけですが、実際には自分が見ていないところで勉強したかもしれないし、これから勉強しようとしているのかもしれない。つまり、真実はわからない。そんな無意味な判断はする必要もなくて、ただいとおしい存在としてわが子を見るようにすれば、無駄に怒ることも無くなります。すると、親が思う以上に子どもはベストな状態で育っていくようになると思います。

 親が期待ばかりしていると、期待以下にしかなりません。逆に、期待を捨てると、期待をはるかに超えたものになる。親が想像さえできない、素晴らしい世界が広がってくることでしょう。

—— 双雲さんのお話をお聞きしていると、何となく自分でも、ポジティブな子育てができそうな気がしてきました。