3人のお子さんといつもポジティブに向き合い、ベストセラーとなった『ポジティブの教科書』や、その子育て版と言えるポジティブな子育て本『怒らない子育て』を出版している書道家の武田双雲さんによる新連載。第一回である前記事では、「親はなぜ子どもに怒り過ぎてしまうのか」、怒りのファクターを分析していただきました。2回目である今回は「子育てがもっと楽しくなる方法」として自身でも実践し、効果を実証済みの「オーガニック子育て」について語っていただきます。

怒れば怒るほど子どもは勉強しなくなる

日経DUAL編集部(以下、——) 子どもとの心の距離が近すぎると、つい期待が生まれ、期待が裏切られるたびにネガティブな感情が生まれて怒ってしまう――ということなのですが、頭では理解できても、子どもへの期待を捨てるのはとても難しいですね。子育てをしていると、ついつい、「この年齢になったら、そろそろ〇〇ができてほしい」「もっと成績が上がってほしい」などと期待してしまい、できないと「このまま落ちこぼれてしまうのでは?」「将来、思うような職に就けなくなるのでは?」と焦ってしまいます。

武田双雲さん(以下、敬称略) そういうふうに考える親はたくさんいますよね。親として当たり前の思考回路だとは思いますが、注意すべきなのは、成績が上がってほしいからといって、「勉強しなさい!」と怒れば怒るほど、子どもは勉強しなくなるということです。

—— 逆効果なのですね。

武田 考えてもみてください。「勉強しなさい!」と叱られて、「よっしゃー! その言葉を聞いてモチベーションが上がってきたよ。お母さん、ありがとう!」なんていう子どもは1人もいませんよね。「早く起きなさい!」と怒られて、起きたくなる子どもなんていないのと一緒で、言われれば言われるほど、しなくなります。

「叱られることでやる気が出る子どもなんていませんよね」(武田双雲さん)
「叱られることでやる気が出る子どもなんていませんよね」(武田双雲さん)

—— 確かに、ガミガミ怒られてばかりでは、なかなか子どもはヤル気にはなりません。

武田 「子どもの成績を上げる」という目標を作るのはいいけれど、それに向かうための手段が逆効果になるようなことは避けたほうがいいですよね。目標は達成させたいわけですから。

 勉強をさせたいのであれば、勉強に対するモチベーションを高めるようにしなければいけません。一番の理想は、勉強が好きで自ら勉強したくなり、勝手に成績が上がっちゃったという感じですよね。いくら「勉強しなさい!」と怒っても効果はありません。やはり、動機付けをうまくしてあげることが大事です。

 長男が3歳のとき、僕が成功したのは、歯磨きの動機付けでした。どうしても歯磨きをちゃんとしない長男に妻が手こずっていたので、「1回、オレに任せて」ということになり、実験をしてみました。ある日、妻と洗面台の前で長男に気づかれないようにコソコソしているふりをして、2人で歯磨きをしてみたのです。

—— それでどうなったのですか?