ベストセラーとなった『ポジティブの教科書』や、その子育て版とも言えるポジティブな子育て本『怒らない子育て』を上梓している書道家の武田双雲さん。ご自身で考えた造語でお気に入りなのが、今でも書道教室の目立つ場所に飾られている「いきあたりばっちり」の書です。

 これは、「これから起こることは、すべて“神の采配”だからジタバタしても始まらないし、自分が今、生きていられるのは家族や信頼できる仲間のおかげであって、すべてがラッキーなんだ」という意味。「そう考えるようになったら、楽な気持ちで生きていけるようになった」と武田さんは言います。そして、この言葉が持つ力は、子育てにもそのまま生かされているのだそうです。

 3人のお子さんといつもポジティブに向き合う双雲さんに、「子育てがもっと楽しくなる方法」について語っていただく新連載がスタート。第1回では「なぜ親は子どもに怒ってしまうのか」について語っていただきました。

親にリスペクトされて育った

日経DUAL編集部(以下、——) ポジティブな子育て本『怒らない子育て』は、3人の子どもを子育て中のパパである双雲さんの独特の視点で「子どもを育てること」がより楽しくなるヒントがちりばめられています。出版のキッカケは何だったのでしょうか?

武田双雲さん(以下、敬称略) 実は僕自身が、もともと子どもに対して全く怒らないタイプなんですよ。なぜかと言えば、両親に怒られたことがなかったから。逆に妻はものすごく子どもに怒るタイプだったので、何で妻が怒るのか最初は本当に分からなくて、けっこうカルチャーショックでした。

 と当時に、僕は理系人間なので研究対象としてものすごく興味が湧いてしまった。「子どもに対して怒る」という現象のメカニズムを知りたくなったんです。こんなこと言ったら、妻に怒られそうですけどね(笑)。

—— 全く親から怒られることなく育ったんですか?

武田 怒られたことがないというより、僕に対して治外法権だったというか……。親に怒られるような関係ではなかったんですよ。母親は書道家だし、父親は競輪専門誌の記者。両親は共に“アーティスト体質”と言えばいいかもしれないですね。長男の僕が生まれたときに、両親は新しい命に感動し過ぎちゃったというのがあって、赤ちゃんのときからずっと僕は親にリスペクトされて育ちました

 そんな感じで育てられたから、僕も親にリスペクトで返すじゃないですか。お互いが尊重し合っているうちに親子の信頼関係が生まれていったんだと思います。僕は普通に子どもっぽい子どもだったから、ムチャクチャなこともするし、忘れ物もするし、ケガもする。常識的に見れば、怒られる要素がいっぱいあったと思うんですけど、どんなことがあっても上から目線で怒られたことがなかった。

 学校の成績について何か言われることもなかったし、進路について問いただされたこともありません。とにかく、親から「こうしなさい」「こうなりなさい」と言われたことがない。自分の考えや意見を尊重してくれていて、「この子は何やっても大丈夫」といった感じでした。

「いきあたりばっちり」は自身で考えたお気に入りの造語。書に書き、書道教室の目立つ場所に飾っている