今は生活や人生を整える時期

―― コロナの第二波も懸念されていてなかなか不安が払拭されない状況ですが、どのように日々を過ごすのがいいと考えていますか?

武田 自分と向き合う時間も、家で過ごす時間も長いので、家をより良くしていくための土台作りを意識していくといいと思います。僕が提唱しているのは「丁寧道」。毎日、何でもひとつひとつ丁寧にやる。皿を洗うとかご飯を食べる、洋服を着替える、お風呂に入る、歯を磨くなど。時間があるからこそ、ひとつひとつの動作や所作を丁寧にやって生きていく。噛みしめながら生きていく。

 今はアフターコロナの生活や人生の基礎作りをする時期なんだと思います。書道の基本と基礎は止め・跳ね・払いですが、僕たち現代人は日々の生活の基本である家族を疎かにしてきたところがあります。だから、もう一度、基本に立ち返るようにしたほうがいい。家族に感謝をして丁寧に生きるという、日本人が持っていた丁寧な所作で生きていく。そういうことを大事にしていけたらいいですよね。

 今までごまかしていたライフスタイルを整えることで、心が豊かな人が増えていく。「大きく変わる」と書いて大変ですよね。大きく変わって大変なときに、どういうふうに変われるか。それがとても大事だと思います。

イライラしてつい怒ってしまった時には

―― 自身が主催するオンラインサロンでストレスや不安に関するアンケートをとったそうですが、どのようなものが多かったんですか?

武田 聞いてみたら、みんなそれぞれに違うんですよ。夫との関係や子育てによるストレスもあるし、お金の不安やコロナ感染の不安もあれば、漠然とした不安もありました。本当に人それぞれだったのを見て、結局、コロナはきっかけに過ぎないんだなと思ったんです。つまり、コロナ以前から抱えていた不安やストレスが、コロナによって露呈されたというか、見える化されてしまったということ。

 子育てに関していくつかあったのが、やはり、子どもと過ごす時間が長くなったことでつい、イライラして怒ってしまうという悩みでした。怒ってしまった自分を責めてしまう「二重ネガティブ」な状態です。イライラして怒鳴ってしまったとしても、自分を責めないようにしたほうがいいですよね。「ああ、怒ってしまったなあ。人間だものね。子どもといる時間も長いし、コロナの不安もあるから、怒っちゃうよね」くらいの受け取り方をして、次に怒ってしまったときに改善をしていく。自分を責めてしまうと、さらに感情的になってしまうので、それは避けてください。そして、子どもに対して聞き上手になれるように心がけてみてください

 子どもに対して、いちいち小言を言っていたら身が持ちません。子どもは何を言っても反抗するし、ワガママも言います。「メチャクチャな生きもの」くらいに思って、自分の器を広げるようなイメージを持つ。そして、良くない時の自分を、自分で慰めてあげるようにするといいでしょう。