こんな時こそ家庭の中にユーモアを

―― 最近ではコロナ離婚という言葉も聞かれるようになりましたが……。

武田 家庭環境のごまかしが効かなくなってきたということでしょうね。ステイホーム中は、ホームのなかの雰囲気が何よりも大切でした。それはこの先も同じです。仕事でうまくいくことも大事だけれど、自分の人生を考えたときに、いかに家を快適にしておくかとか、妻だけでなく家族全員との関係を良くしておけるかっていうことが大切なんだと、みんなが気づき始めたと思うんです。

 特に日本人は仕事優先で家族と過ごすことを後回しにしてきた人が多いんじゃないでしょうか。しかし、いつまでコロナに左右されるか分からないなかで人生のリスクマネジメントや幸福度アップのために、家で過ごす時間と空間と家族との関係性をどう良くするかということが、問われていると思います。

―― 家族が仲良く過ごすためのコツは何でしょうか?

武田 これは以前からお話ししていることと同じですね。基本はまず相手の話を聞くということです。例えば、バラがあまり好きではない女性に1000本のバラを贈っても嫌われるだけですよね。バラ好きの女性であればマッチするので、それが「思いやり」になるけれど、バラ好きでないならそうならない。思いやりの行動をするために必要なことは、相手のことを知る、ということ。ビジネスで言えば、マーケティングで顧客を知るということですね。まずは相手が何を考えていて、何を思っているかを引き出す。そのために必要なのはインタビューですよね。何気ない会話でいいと思うんですけど、家族でお互いの思いを話すことがとても重要だと思っています。

 他にも、これは僕流なんですけど、「たわむれる」とか「ふざける」というのは、特にこの時期こそ重要だと思っています。ユーモアですよね。ふざけながらのど突き合いでもいいし、ボケとツッコミで会話するでもいい。こうしなさい、ああしなさい、こうしてほしいといった指示や要求のコミュニケーションではない、もっと本能的なたわむれとかじゃれあい。家族同士でマッサージをするというのもオススメです。僕は妻のマッサージを毎日するのですが、そこで会話も生まれるし、妻も喜んで僕にやさしくしてくれます。

 この作戦のおかげで、子どもたちはステイホームを楽しんだみたいです。休校が約1カ月延びたとき「やったー!」って喜んでいましたからね。とはいえ、すべての時間を家族全員で過ごすということを無理やりしないようにしたほうがいいと思います。食事やボードゲームで遊ぶなど、全員が集まる時間もあれば、逆にそれぞれが1人で楽しむ時間もある。子どもを放っておくというか、お互いに干渉しない時間も必要でしょう。