男性は共感が苦手。だからこそ大切なのは「傾聴」

―― 同調することなく、いきなりアドバイスから入ってしまうとやはり、地雷を踏んでしまうということですね。

武田 もしかしたら、妻はただ愚痴を聞いてほしかっただけかもしれない。そんなときにいきなりアドバイスするというのは、やはりダメですよね。例えば、僕のことをとても尊敬してくれるお弟子さんがいるとするじゃないですか。実際に神様のように尊敬してくれるお弟子さんもいるのですが、そういう人から相談を受けたときに「こうしたらどうですか?」っていきなりアドバイスをすると、「それはちょっと……」となることが多い(笑)。神様のように思ってくれている人でもアドバイスを素直に受け取れないことが多いのに、夫の言葉なんてさらに素直に受け取ってくれないのではないかと思いますね。

 人間って、けっこう頑固なんです。グッと我慢していることもあるから、たまには吐きだしたいこともあるじゃないですか。同調もなくいきなりアドバイスするっていうのは、嘔吐している人に「その嘔吐はよくないよ。なぜなら、この嘔吐物はね……」などと言っているようなものです(笑)。いやいや、もう目の前のこの人は既に嘔吐しているんだから、受ける容器を出してあげるしかないじゃないですか。あとは背中をさすってあげるとかタオルを用意してあげるとか。「気持ち悪かったね、大丈夫?」って言ってあげる。こういった会話を心掛けることが大事なんじゃないでしょうか。

―― なるほど、それは分かりやすいたとえですね。

武田 多くの夫は、嘔吐している妻に対して、嘔吐しないようにアドバイスをしているようなものですよね。さらに最悪なのは、嘔吐していることを批判してしまうとか。そうなると、怒りという火にさらに油を注ぐようなものです。そんな状況を見ると、人間って何て非効率的なことをやっているんだろうって思っちゃいますよね(笑)。子育てにおいてもそうですよね。いつのまにか、目的とは違う方向に行ってしまうということはよくあることだと思います。

―― 多くの男性は、いくら「まずは共感しましょう」と言われても「よく分からない」というのが本音かもしれません。

武田 確かに、夫婦といえども一生、混じり合わないことはたくさんあると思います。だからこそ、共感することが苦手な男性は、まずは「傾聴」してみることから始めるほうがいいでしょう。僕も結婚当初は妻に共感することが苦手で地雷踏みまくりでした。妻が何か愚痴を言っているときに「いや、こうだからこうすればいいじゃん、カンタンじゃん」などと言っていたんですよね(笑)。

 でも、今はいろいろと経験してきた中で、妻が愚痴を言っている時には何もジャッジしないようにしています。そして、「へぇ? そうなんだ」などと、ひたすら相づちを打ちながら話を聞く。そうするだけでも妻は機嫌がよくなっていきます。うまく対応できたときには、突然、コーヒーを入れてくれたりもしますからね(笑)。