「モンテッソーリ教育の本質への理解さえあれば、子育てはもっと楽しくなりますよ」。そう語るのは、モンテッソーリ教育の実践者、高根学園理事長の高根澄子先生。

これまで5回にわたり、子どもの発達段階に応じて現れる生命のプログラム、「敏感期」について聞いてきました。最終回はモンテッソーリ教育のキーワードともいえる「集中」現象と、親である私たちが子どもにできる「援助」についてアドバイスしてもらいました。

親ができる適切な「援助」とは?

――― これまでモンテッソーリ教育のエッセンスというべき「敏感期」についてお話を伺ってきました。それぞれの敏感期の特徴を知って、その時期に合わせて適切な「援助」がなされると、子どもはさまざまなことを驚くほど簡単に吸収するというお話がありました。まずは敏感期のタイミングを知ることからはじまりましたが、今回は適切な「援助」について聞かせてください。親が子どものためにできる「援助」とは具体的にどんなものでしょうか。

高根澄子先生(以下、敬称略) まずは、愛情。子どもの成長というものは常に次の発達段階の準備のようなものですが、その瞬間、瞬間を味わい、喜びをもって子どもとともに成長していく体験はパパやママにしかできないことです。愛情をもって、親自身が子育てを楽しみましょう。とはいえ、ただかわいがるだけでなく、注意力を持った愛情が必要です。

数の神秘に魅せられた年長さん(5歳)が「この板1枚は10の珠が10列で100」と年中さん(4歳)に教えています
数の神秘に魅せられた年長さん(5歳)が「この板1枚は10の珠が10列で100」と年中さん(4歳)に教えています

――― 注意力を持った愛情ですか?

高根 注意深く観察し、子どもがいまどんなことに好奇心を持っているか、子どもの心の深いところに眠る興味を探ることです。「やりたい!」と手を伸ばしたことが、本当に興味があることなのか、周りのお友達がやっているからまねをしたいだけなのか、パパやママに言われたからやっているのか、見極めることも肝心です。ただし、ひとたび子どもが自発的に選んだならば、その興味を尊重しましょう。自分で選んだ興味が本物かどうかは子どもの手の動きをよく見ていれば分かりますよ。モンテッソーリは「手は外側の大脳」と言いました。興味の対象に対してより慎重に、より正確に向き合い、手を動かして繰り返し活動し、集中がはじまったら、その興味は本物です。余計な介入はせず、たとえ時間がかかっても「ひとりでできる」ようになるまで、忍耐強く見守ることです。集中できるよう十分なスペースを確保し、準備することも大人の役割ですね。