間違いの自己訂正は、子どもにとってはかけがえのない「発見」

 ただし、集中がはじまったら、大人は気配を消してなりをひそめるくらいでちょうどいいですよ。繰り返し行う過程で、大人が教えなくても子どもは自分自身で「間違い」に気づきます。この間違いの自己訂正は本人にとって、かけがえのない「発見」なのです。この「間違い」を「失敗」と言い換えてもいい。失敗するから、「どうしたらうまくできるのだろう」と自分で考え、「次はもっとうまくやろう」と工夫する知恵もでてくるのです。

――― どんどん失敗していい?

高根 そうです。失敗しない子どもは制限を知らない子どもです。失敗の痛みを知らない子どもは他人の間違いを許せない子どもになります。ですから、親が先回りして「失敗しないように」手をさしのべることは子どもの貴重な機会を奪うことです。どんどん失敗していい。この時、自分の頭で考えられるようになった子どもは、次の発達段階、6~12歳の児童期で「なぜだろう?」「どうしてそうなるんだろう?」と、ものごとをより抽象化する知性の力が飛躍的に伸びることでしょう。

――― 集中をもたらす刺激を用意するために、はめこみ円柱や、ピンクタワーなど「感覚教具」を家にもそろえたほうがいいのでしょうか。

高根 私たちの幼稚園では子どもの豊かな敏感期に合わせ、発達を助けるためのさまざまな教具を用意していますが、こうした教具を一式そろえ、家庭にもちこめばうまくいくというものではありません。モンテッソーリが編み出した「感覚教具」はおもちゃではないからです。

 ご家庭でも日常生活の中に発達の助けになる体験ができる活動がたくさんありますよね。食事の配膳の準備やおそうじ、洗濯をはじめ、花を飾るなど環境を美しくすることにも子どもは関心を示します。

「蛇遊び」と呼ばれる感覚教具。1+9、2+8、3+7……と10になる組み合わせの法則を子ども達は手を動かしながら感覚的に自然に発見します
「蛇遊び」と呼ばれる感覚教具。1+9、2+8、3+7……と10になる組み合わせの法則を子ども達は手を動かしながら感覚的に自然に発見します