2020年度から順次始まる、小・中・高校のプログラミング教育の必修化に伴い、親たちの「プログラミング教育熱」が高まっています。しかし、一方では学校や習い事で学ぶ「プログラミング」が、本当に子どもの将来に役立つものであるのかは未知数です。IT業界の最先端で働くエンジニアの目には、現在のプログラミング教育はどう映っているのでしょうか? 今回は、リンクトイン日本代表でIT業界の最先端で活躍するエンジニア・村上臣さんに、本当に子どもの将来に役立つ「プログラミング教育」について伺いました。

(1)リンクトイン日本代表 息子へのスマホ貸与契約書
(2)日本と海外のプログラミング教育はここが違う! ←今回はココ
(3) 子どもを“ダシ”にすると、育児はもっと楽しくなる
(4) 僕がモンテッソーリ教育を選んだ理由
(5) 妻に子どもへの「興味」まで丸投げしていないか?

日本のプログラミング教室は、“子ども”ではなく“親”が主体

 プログラミング教育に対する熱は、日本だけでなく海外でも高まっています。特に中国や香港といった、受験競争の激しい国ではその傾向が顕著です。

 しかし、実際に日本とそれらの国では、プログラミング教育に対する認識が大きく違っています。どちらも科学技術・工学・数学分野の教育であるSTEM教育(Science, Technology, Engineering, Math)の一環として注目されているのは同じですが、日本式が従来の教育の延長線上で「理数系教育の強化」を掲げているのに対し、中国や香港では、強化した理数系の知識をベースに、「いかにしてテクノロジーを使いこなし、新たなものを生み出すか」という、さらにその先を見据えているのです。

 実際、IT業界で働くエンジニアからすると、日本の大半の学校やプログラミング教室で行われているプログラミングは、非実践的内容であると言わざるを得ません。それは、主催側の意図が、子どもではなくスポンサーである「親」を短期的に喜ばせることに終始しているからです。

 親を満足させるには、分かりやすい成果物が必要ですよね。その結果、「今日は、ゲームを作りました」「●●さんのお子さんはすごいですね!」といった、親と主催者側のやり取りが重視されてしまい、肝心の子どもは蚊帳の外。つまり、学びの本質からずれてしまっているんですね。

[日本のプログラミング教室は、“子ども”ではなく“親”が主体になっている」(リンクトイン日本代表・村上臣さん)
[日本のプログラミング教室は、“子ども”ではなく“親”が主体になっている」(リンクトイン日本代表・村上臣さん)
<次のページからの内容>
● 学ぶべきは、プログラミングよりも「コンセプトメーキング」
● 本質を教えるロボット教室「L-nest School(リバネススクール)」
● プログラミングとは、ものづくりの中で体得するもの