教育は効率の良さだけ求めてはいけない

 では、学校の先生たちにゆとりがないなか、学習指導要領が変わろうという今、保護者の皆さんは何をしていくといいのか。

 もしかしたら学習指導要領によって「画一化」された教育が行われていると思われる方も多いかもしれないのですが、僕はどちらかというと、「効率化」されてきているのではないかと感じています。昔は本当にさぼっている先生もいたものですが、今の先生方はきちんとしている。これは授業日数、時間数が厳しくなっていることが関係していますが、教え方もうまくなっていますし、効率が良くなっている。

 でも教育は効率の良さだけ求めてはいけないのです。例えば演劇に取り組む中で発生する、一見無駄に見える「話し合い」の時間も大切なのです。

 今すぐ、コミュニケーション教育としての演劇を授業に組み込めない場合、せめて情報弱者にならないように、アンテナを張るといいと思います。

 演劇などの芸術体験は、本物を見る、本物に触れるだけでも子どもにとっては大きな刺激となりますが、そうした機会を得られるかどうかも、子どもによって差が大きいのが実情です。例えばわが子は0歳児のころに5、6回は世田谷区や杉並区が主催する、0歳児向けの演劇を見ています。自治体がやっている演劇を細かく探せば、月1回のペースでとても安く見られます。

 情報格差は経済格差に直結しやすく、豊かな家庭のお子さんほど、情報に対するリーチ力が高い。だからこそコミュニケーション教育格差がこれ以上広がらないように、ワークショップだけでも、自治体で全校実施してほしい。その働きかけを、皆さんにはしていってもらいたいのです。1000円、2000円という参加費用を払うのが惜しいと思うかもしれませんが、将来を考えれば安い投資なのではないでしょうか。もちろん、それも難しいご家庭には公的な支援も必要です。

 皆さん一人ひとりに、このことを考えていっていただければと思います。

構成/山田真弓(日経DUAL編集部) イメージ写真/PIXTA