都立高校の教育が相当いいという証し

 「大学院で挽回」できると考えてもらえれば、より豊かな学校選びができるように思います。

 例えば、都立高校は今、変わってきています。

 僕の時代は都立高校に行くのが当たり前で、その代わり「大学受験時には1年浪人させてください」というのが普通でした。高校3年間はしっかり楽しみながらいろんな経験を積んで、1年浪人して大学受験の準備をして、進学していたわけですね。ただそれによって一時、都立高校の評価が下がり、中高一貫校人気が高まったのは事実でしょう。

 それが今、これほど中学受験をして中高一貫校に行く子どもが多い中、都立高校から相当数の生徒が東京大学など「一流」大学に進学できている。これは都立高校の教育が相当いいという証しだと思うんですね。

 ただ、戸山高校など旧ナンバースクール(※都立高等学校の中で、東京府〈現・東京都〉による設立〈移設〉順を示す“ナンバー”を校名に冠した旧制中学校・旧制高等女学校を前身校に持つ学校)などの伝統的な高校は、3年生まで文化祭にもしっかり参加させてある意味「遊ばせる」ので、その点を不安視する親御さんはいるでしょう。昔から進学校と言われる学校ほど、文化祭や体育祭などが熱心な傾向がありますし。

 でも、この先求められるのは「就職する力より、転職する力」だと僕は思っています。その「力」を付けるために必要なのは、「自分とよく似た、中学受験をしてきたレベルも同じくらいの生徒」が集まる中高一貫校で「一流大学」にぎりぎりで入るより、より多様性を経験し、様々な経験を積むことではないかと思うのです。

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 次回は「教育虐待」について、「就職する力より、転職する力」そして「逃げられる力」について、見ていきます。

(構成/日経DUAL編集部 山田真弓 イメージ写真/鈴木愛子)