大学入試改革も「船頭多くして船山に登る」状態

 大学入試改革そのものも問題山積みです。

 当初、文科省としては一次試験は本当に基礎的な学力を問うような試験を想定していたと思うのですが、これに対してもいろんな人がいろんな意見を言ううちに、やはり思考力も問わなければならない、文章題を入れなければならないということになってしまった。そして文章題をコンピューターが判定するというような、あと30年かけてできるかどうかという案まで出て、一時、大混乱しました。

 僕は今でも「共通テスト」と呼ばれる一次試験には、文章題は出さないほうがいいと思っています。本当に基礎的なものを問うて、その基礎学力のうえで、思考力・判断力などは大学の選抜に任せればいいのではないかと。ただ、現状はそうなっていないため、何度試行試験をしてもうまくいっていない。さらにマスコミが「試行試験がうまくいっていない」ということばかりを興味本位で取り上げるので、みんな疑心暗鬼になっています。

 この点は、文科省もかわいそうなところで、文部科学大臣が問題点を把握してリーダーシップを発揮し、スッパリと「こうする!」という方針を言えばよかったのですが、そうはなっていない。なにしろ、「思考力を測ったほうがいい」のはそれはもちろんそうですし、そういった「良いこと」は否定しにくいんですよね。教育に関しては、できるかできないかよりもみんな、よってたかって「良いこと」を言いやすいから、困ってしまうんです。

 本来は文部科学省の中枢がちゃんとリーダーシップを取って、制度設計をしたほうがいいのですが、まさに「船頭多くして船山に登る」の状態が、2020年の教育改革の現状なのです。

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 次回はこうした「教育改革」が招く、大学そのもののありかた、そして親の「強迫観念」について、見ていきましょう。

(構成/日経DUAL編集部 山田真弓 イメージ写真/鈴木愛子)