青年団を主宰し、世界的に活躍する劇作家・演出家の平田オリザさんは、大阪大学COデザインセンター特任教授、東京芸術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐などさまざまな場所、形で教育活動に携わっています。
 学校選びや学ぶ環境について、あるいは親の心構えなど、今の子どもたちが20年後、生き抜く力を身に付けるために必要な「教育」について、平田オリザさんと考えていく連載。
 今回は今後の社会に必要とされる、コミュニケーション能力を育成する教育について。演劇を教育の現場に取り入れることの効果は、平田さん自身実感してきていますが、なかなか進まない理由とは…。

コミュニケーション教育は低年齢から始めたい

 20年後を生き抜く力として、コミュニケーション能力が大切だということは皆さん感じていらっしゃることでしょう。

 僕自身がコミュニケーション能力を育成する教育に携わる中で実感しているのは、特に演劇を取り入れる場合、低年齢から始めるほど、抵抗なくできるということです。小学校高学年から急に取り入れようとしても、なかなか大変です。

 例えば小学校の算数から中学校の数学に移行する際も、一人ひとり習熟度が違いますから、「せーの!」で簡単に切り替えられるわけではありません。習熟の度合いにはずれがあるので、ついていけなくなる子が出てくる。

 こうしたことは、どの教科学習にも起こり得ることです。

 ただ演劇や音楽、図画工作といった芸術教育が、国語、社会、算数、理科といった教科学習と異なるのは、表現する、あるいは何かになってみるというのは、本来楽しいはずだということ。もちろん教科学習も、「分かる」楽しさがありますが、どうしても「やらされている」感があるとつらくなる瞬間が来る。一方で、芸術教育はもともと楽しいと感じる要素がある上に、幼稚園・保育園のころから継続してやって来てさえすれば、多くの子どもが楽しめますし、身に付くようになるのです。