青年団を主宰し、世界的に活躍する劇作家・演出家の平田オリザさんは、大阪大学COデザインセンター特任教授、東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐などさまざまな場所、形で教育活動に携わっています。
 学校選びや学ぶ環境について、あるいは親の心構えなど、今の子どもたちが20年後、生き抜くための力を身に付けるために必要な「教育」について、平田オリザさんと考えていく連載。
 今回は、20年後を生き抜く力とは何かについて。今いる自治体で、その力は本当に身に付けられるのか、親自身の生き方も問われているようです。

現場を任される教員からは不満の声も

 前回、国全体のボトムアップのために各家庭ですべきことは、各自治体が子どもたちのために何をしているかを知り、その自治体の教育施策を調べてみることですというお話をしました。

 実際、自治体の意識は変わってきています。

 2015年にベネッセホールディングス(岡山市)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」が全国の市区町村1741自治体を対象に行った調査によれば、「自治体の発展のためには、子育て・教育施策を最優先するつもりだ」と回答した自治体は75.9%。回答者を首長に絞った場合の割合は94.4%だったと公表されています

 一方で、現場を任される教員からは不満の声も挙がっています。理由は明白です。教員の給与は決して良いとはいえず、それなのに変化に対応しながら質の高い教育をしなさいと言われているからです。国立教育政策研究所が公表している「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)平成25年調査結果」によれば、日本の教員の勤務時間は調査に参加した34カ国・地域中で断トツに長く1週間当たりの勤務時間は最長(日本53.9時間 、参加国平均38.3時間)で、ただでさえ業務過多になっているのに、さらに研修や勉強を重ねて知識をアップデートし、よりよい教育を提供しようとしています。しかも人員不足感も大きいなかで。

 もはや彼ら教員は子どもたちのために、未来のためにという「理念」だけで動いている状態です

 もちろんそのことに自治体が気付いていないわけではありません。先の「ベネッセ教育総合研究所」の調査によれば、子育て・教育施策の課題として、自治体の約7割が「予算不足」を、6割弱が「人材不足」を挙げ、4割以上の自治体が「成果が表れるまでに時間がかかる」「育成した人材が地域外に出てしまう」と回答しています。

 ではどうしたらいいのか。