多様性を自分の力にすることができるという点で、演劇教育は重要

 体育の授業での「跳び箱パフォーマンス」などもその一つです。

 「跳び箱パフォーマンス」では、跳べるかどうかが重要なのではなく、どんなフォーマンスを見せるかが課題になります。ですので例えば3段跳べる子、5段跳べる子、7段跳べる子、さらに跳べない(跳ばない)子という4人で1つのグループを作り、「音楽を使う」「一斉に跳ぶ」「順番に跳ぶ」「跳ばない子はポーズを決める」といった作戦を4人で立て、どのように見せるかを決めるわけです。そして実際の演技は録画しておき、それを見ながらそれぞれのグループが互いに評価をする。

 これまでなら「3段より5段、5段より7段跳べる子のほうがいい」とされてきたものが、多様なタイプの子がいる中で、どうしようかと話し合う。その時に大切なのは、跳べることに価値があるのではなく、「跳べる段数が違う」ことをどう生かしていくかなんです。跳べなくても、それが面白ければ、見る側からの評価は高いですし、3段跳べる子が面白かったりする。しかもそうやって楽しみながらパフォーマンスしているうちに、3段から5段に跳べる段数が上がったりもする。これもまた、「学び合い」でもありますね。

 そういう多様性を生かすような経験をたくさんさせることは、世の中は実際に多様性に富んでいるということを感じ取るためにも重要です。

 僕はこの多様性を自分の力にすることができるという点で、演劇教育はとても良いものだと思っています。

 皆さんにはぜひ、変化を恐れず、子どもたちが20年後を生き抜く力を身に付けられるよう、教育に向き合っていっていただきたいと思います。

構成/山田真弓(日経DUAL編集部) イメージ写真/PIXTA