少なくとも自治体は教育施策を「無償化競争」にすべきではありません

 現状では自治体に魅力的な学校作りが委ねられている以上、魅力的なコンテンツ、質で競っていかなければならないのです。特に都市部以外の地方自治体では、若い世代が移住したくなるような教育を用意しなければならないでしょう。そのためには人材の確保は必須であり、教員の待遇を向上させなければならないはずなのです。

 一見、不可能なように思えるかもしれませんが、すでに施策を開始している自治体もあり、そうした地域では若い世代の移住者が増えています。

 例えば、私がこの秋に移住する予定の兵庫県豊岡市もその一つです。

豊岡市の教育、3つの柱

 豊岡市では「ふるさと豊岡を愛し 夢の実現に向け挑戦する子どもの育成」を基本理念とする「とよおか教育プラン」を2015(平成27)年度から実施し、「あたまの力の育成」「こころの力の育成」「からだの力の育成」「あたま・こころ・からだの3つの力を支える基礎力の育成」「特別支援教育の充実」の5つの施策を推進。2017(平成29)年度には小中連携教育から小中一貫教育へシフトし、「豊岡こうのとりプラン」として9年間での教育を考えています。

 「豊岡こうのとりプラン」の目玉となるのが「ふるさと教育」「英語教育」「コミュニケーション教育」の3つの柱。なかでもコミュニケーション教育は、38すべての小中学校で演劇の手法を使った授業も行ってきていて、それがコミュニケーション能力を高めていることが分かってきています

 こうした成功例を見て、周辺の自治体からも、コミュニケーション教育を取り入れたいという声が挙がるようになっています。

 今後、ますます自治体ごとの取り組みは増えていくでしょう。それならいっそ、国が地方に権限ごと移す、つまり中央省庁が予算決定権などの権限を放棄したほうがいいのではないかと思いますが、なかなかそうはならないようです。