私立の進学校のように勉強をさせる公立の小中一貫校も出てきている

 ただし公的な機関が介入することが、教育者にも、子どもたちにも負担になる構図も生まれてきています。その一つが、「小中連携教育」です。

 例えば世田谷区や品川区では、「小中連携教育」を推進しています。

 世田谷区の場合、「美しい日本語を世田谷の学校から」と題した取り組みを2003(平成15)年度から開始。2004(平成16)年12月に内閣府から「世田谷『日本語』教育特区」の認定を受けて、2007(平成19)年度から、区立全小・中学校において「世田谷9年教育」という教育課程を編成。「日本語」という独自教科のために大変立派な教科書を用意しています。

 品川区では2006(平成18)年度からすべての区立小・中学校で、小中一貫教育を実施しています。やはり独自教科として「市民科」という科目を展開しているのですが、これも9年間で学ぶようにカリキュラムが組まれています。

 そもそも小中連携には小中接続時に起きるいわゆる「中1ギャップ」解消や、9年を通したカリキュラムにより学力を向上させて受験競争の低年齢化を防ぐ狙いなどもあるわけで、実際にそうした役割を果たしつつあるでしょう。ただそれが「管理教育」を招く側面もあるのです。結果、私立の進学校かと思えるほど勉強をさせる公立の小中一貫校も出てきています。「管理教育」ではどうしても、教員も生徒も負担が大きくなりがちです。

 非認知スキルを高める体験にしても、中学受験にしても、親がわが子をどう育てたいかという教育方針を各家庭がしっかり持ち、何より子どもの特性を見極めた上で考えていかなければならないものです。その上、中学受験をしないと決めたとしても、どこに住むかによって受けられる教育が大きく違ってきてしまう現状は、各家庭を悩ませることにもなるでしょう。

 2020年以降、教育改革によって偏差値により決まる大学受験はなくなっていくといわれ、その影響を受けて、小・中・高校の教育は徐々にでも変わっていくことが考えられます。わが子はこつこつタイプなのか、大器晩成なのか、発想はいいけれど落ち着きがないのか。そんな個々の特性を捉えてどんな教育を受けさせていくか、たくさんある選択肢の中から選び、合わなければ選び直すこともできる。大変ですが、これをポジティブにチャンスと捉えていくしかないと思います。

構成/山田真弓(日経DUAL編集部) イメージ写真/鈴木愛子