学校や子育て支援施設でお手伝いの機会を

 今の日本の子どもたちは、世界的に見ても家事手伝いをしなくなっています。これは家事が急速に電化されてしまったためであり、親が意図的に頼まないと「お手伝い」すること自体なくなってしまったんですね。「おつかい」も減りましたよね。買い物は週末にショッピングセンターで一度に済みますし、ちょっとコンビニに買い物に行ってきてといったところで、無言でも買い物ができてしまうので、非認知スキルを上げる「他者との関わり」がありません。

 貧困世帯の場合、さらにお手伝いの機会が失われているのではないかと僕は推測しています。例えば親の労働時間が長いと、弁当や菓子パンをコンビニで購入して、プラスチックの容器に入ったまま食べて終わり……となる日も増えてしまうでしょう。すると、肉や野菜の価格を知ることもなく、家で料理をすることもなく、さらにお皿洗いすらせず、「家事をしない」生活に陥ってしまいます。親が家事をしなければ、家事の手伝いが存在しなくなってしまうわけです。

 かつては、洗濯も掃除も食事作りも、手作業の部分が多かったので、貧困世帯の子どもは積極的に手伝わなければならない環境があった。それが非認知スキルを高める役割を果たしていたのではないかと思われます。だからこそ経済力が高くない家庭からも一定数、能力の高い子どもが出てきていた。

 もちろん、非認知スキルを育むのは家事だけではありませんが、ただコツコツした学習よりも、多様な体験から生まれるのが非認知スキルであることは間違いありません。その絶好の機会である「お手伝い」すら、経済力の高い生活にゆとりのある家庭の特権になってしまいかねない現状は、社会全体として見直す必要があるのではないでしょうか

 今後は学校や子育て支援施設、子ども食堂など、ある種の公的な機関で「お手伝い」する機会を提供していくということさえも、考えなければならないのではないかと思います。