青年団を主宰し、世界的に活躍する劇作家・演出家の平田オリザさんは、大阪大学COデザインセンター特任教授、東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐などさまざまな場所、形で教育活動に携わっています。
 学校選びや学ぶ環境について、あるいは親の心構えなど、今の子どもたちが20年後、生き抜くための力を身に付けるために必要な「教育」について、平田オリザさんと考えていく連載。
 今回は公教育の質を取り上げます。最近では未就学の時点で「受験」を意識するご家庭も増えていますが、その背景には「公教育の質の低下」に対する不安があるのかもしれません。では公教育の質を上げるためにはどうしたらいいのでしょうか。

幼稚園や保育園、3年以内の離職率が高い理由

 今、公教育に従事する先生たちは、厳しい環境に置かれています。例えば幼稚園や保育園の先生の現状については、皆さんもよくご存じかもしれません。

 幼稚園教諭や保育士を養成する大学で話を聞くと、どの大学でも「幼稚園も保育園も人手不足だから就職率は100%」ながら、「3年以内の離職率が高い」と口をそろえます。実際、文部科学省が2018年に発表した「幼児教育の現状」によれば、幼稚園教諭離職者のうち30歳未満の割合が約71%を占め、平均勤続年数は約7年ととても短いのです。ちなみに小学校教諭の30歳未満離職者の割合が約7%、平均勤続年数が約17年ということを考えると、かなりの離職率でしょう。

 では離職の要因は何かというと、ほとんどが対子どもではなく、職場の人間関係と、対親にあるといいます。

 職場の人間関係に関しては、職場環境の変化そのものが関係していると僕は分析しています。特に幼稚園では、かつては園長先生の他は若い先生から構成されていることが多かった。それが徐々に、長く続けられる先生が増え、中間管理職を務める先生が出てきました。この中間管理職層はノウハウは積み重ねてきていますが待遇は一向に良くならない。一方で、若い世代の先生は教育により最新のノウハウを持っているという自負がある。互いに微妙な意識の差があると言えます。

 こうした今までにはない職場の人間関係が生まれている以上、本来はそれに応じたシステムやコミュニケーションの仕方を見つけていかなければなりません。もちろん現役のベテラン先生が情報をアップデートするための研修をはじめ、文部科学省でもキャリアアップや処遇改善に動き出していますが、まだまだ追い付いていない。これが、若い世代には耐えられない状況を生み出し、離職につながってしまうのではないでしょうか。

次ページから読める内容

  • 本来、幼児教育・保育の無償化の前にすべきこと
  • やることは増えるのに人は減らすとなっては、質は下がる一方
  • 「6・3・3・4制」の見直しや、教育の「地方分権・学校分権」化を視野に
  • フィンランドでは「日本の先生は優秀だから、教えることはない」とも

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