「上から下りてきた教育」を子にも受けさせるのではダメ

 地方への移住のポイントは教育だとお伝えした通り、自治体ごとに受けられる教育は変わってきます。

 例えば、秋田県は小学校の学力試験で全国1位を取ってきていますが、総人口は98万684人(2018年10月1日現在)で前年比1万4690人(1.48%減)と人口減少率もトップです。小学校の教育がいかに素晴らしくても、地元を離れなければいけない人が多いのだとしたら、何のための教育なのか、本当にその子の生きるための教育になっているかどうか、分からなくなってしまいます。

 では生きるための教育とは何か。一つには「転職する力」をつけるための教育です。

 今は、終身雇用のつもりで入った企業の中でも、部署が変わったり自分のやっていた仕事をAIがするようになったり、仕事内容そのものが時代と共に全く変わったりといった変化が起き、「企業内での転職」が起きる時代です。今後、どのような職業ならなくならないかなどということは、全く予測がつきません。でも、分からないのであれば、分からないことに対して対応できる力をつけたほうがいい。そうなったときに転職できる力をつけたほうがいいんです。

 大学を卒業する22歳の時点で、20年後が予測できるような就職なんてありえないんですから。

 だからこそ、何かのためになるだろうとたっぷり習い事をして、塾にも通っていっぱいいっぱいで中学受験に臨み、有名な中高一貫校に進学して、大学も就職に有利だからと“名門”に入り、いわゆる大企業に就職するというやり方は、そろそろやめなければならないのではないかと思います。親が失敗しないように、良かれと思って用意した一本道をずっと進んできて、就職してからメンタルをやられるよりは、その子の個性に合わせた教育が受けられるほうがいい

 もちろん、どんな道を進んできても競争に強い子はいるのですが、例えば優秀だけど心優しい皆さんの子どもたちを、ブラック企業に就職させて大丈夫でしょうか? 僕は、就職した企業がブラック企業化してしまった場合でも、そこから逃げられる力をつけるほうが大事だと思います。

 転職できる力、逃げられる力をつけるためには、親がどこかで厳しく子どもを突き放さないといけない。そのためには、まずは親世代が「上から下りてきた教育」をそのまま受けさせるのではなく、自分たちでどういう市民になりたいかを考え、行動する必要があると思います。

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 次回は「教育が先生と親をつぶしていないか」「教師の現状」について見ていきます。

(構成/日経DUAL編集部 山田真弓 イメージ写真/鈴木愛子)