地方への移住、自治体と子育て世代に問われるもの

 移住者を増やすには教育が重要だと気付いている自治体はまだまだ少ないですし、情報発信力も弱いのが実情です。

 移住の糸口としての子育て支援策としては、単純に助成金のばらまき型がまだまだあります。でもそれでは自治体の負担ばかりが増えてしまいます。できればここは、国としての全体の基準を設ける(あるいは上げる)べきところ。さらに自治体ごとに、伝統などに根ざしたユニークネスを発揮できるような分野で競うようになるのが理想です。

 都会に住む人々は、都会の無名性に引かれている部分もあるので、しがらみが苦手なケースが多いですよね。僕はよく、地方自治体のUターン担当者に「東京は防災のことも含めて人と人とのつながりが希薄で、それはみんななんとなく危機感を感じていて地方移住を考えている。だいたい若者の3分の1くらいは移住を考えているといわれていますが、一方で、地方のきついしがらみもみんな苦手なんですよ」と説明しています。

 でもそれが地方の職員の方にとっては「そんなわがままな!」「つながりがいるのかいらないのか、どちらなんですか!?」という話になってしまうこともあります。それでも僕は、「リベラルでオープンなんだけど、最低限つながっているという街づくりを目指す」ことが、これからの地方の課題なのではないか、ある意味で、日本に本当の市民社会をつくっていくということなのではないかと思っています。私はこれを、「暮らしやすい町」から「生きやすい町」へ。あるいは、「ちょうどいい町」を作ると呼んでいます。

 今は、自治体が未来に向かってどういう町をつくっていくかということが問われていますし、同時に子どもを育てる親世代もどのような地域社会、市民社会をつくっていくかが問われているのではないか。それぞれが意識改革を行っていくべきフェーズに入ったのではないかと思うんです。