東京の人口を減らすしかない

 長期的とまではいかなくても、中期的にこうした問題を抜本的に解決するには、東京の人口を減らすしかないと僕は思っています。子どもにあれもこれもと習い事をさせ、中学受験をさせられるのは経済的にゆとりのある層です。東京の都市部ではこれによって、ますます二極化──断絶が進んでしまいます。中学受験で中高一貫校に進学した生徒にどれほど貧困の話をしたところで、実感することは難しいでしょうし、多様性の理解につながりにくくなります。しかもそれが、教育虐待につながってしまうのであれば、なおさら見直さなければならないでしょう。

 地方に移住する人が増えれば、その地方のコミュニティーも充実していきます。また近隣の保育園や幼稚園、公立小学校から中学校へと進むという選択肢も普通に出てくるでしょう。

 もちろん東京でしかできない仕事もありますし、個別の事情は尊重すべきでしょう。ただ教育の全体最適を考えるなら、地方に移住したほうがいいと思うんです。

 例えば習い事も、地方自治体の中には公的支援のある習い事の提供が広がってきています。千葉県の南房総市では小学校5、6年生の児童の保護者で、南房総市に居住し、かつ南房総市の住民基本台帳に登録されている保護者が利用できる「学校外教育サービス利用助成事業に係る塾利用助成券」があります。また奈良県の川上村には「川上村 習い事補助金」があり、子どもの習い事(芸術・文化・スポーツ・学力補充)にかかる費用のうち、1種目の年間受講料などの3分の1(上限2万円)を助成しています(1人3種目まで)。

 もちろん都内でも体操教室や水泳教室、その他ワークショップなどの形で自治体が支援する習い事もありますが、親同伴でなければならなかったり、平日の昼間にしか行われていなかったり、さらには情報そのものにリーチしにくい仕組みになっていたりします。この状態は人口が多い都市部ではなかなか解決できないでしょう。

 その点、地方なら子育て人口そのものが少ないので、自治体がしっかりとした方針を立てれば情報やサービスにたどり着きやすいですし、移住者も一緒に、新たな地域社会を築き上げていく機会が持てると思います。

 一方で、地方の自治体にも課題はあります。