DIYとは、Do it yourself (自分で作ろう)の意味。日々時間に追われる共働き世帯にとって、少し縁遠い話題かもしれません。しかし今や世はDIYブーム。DIYを取り巻く環境は、驚くほど進化しています。DIYの最大の魅力は、自分の暮らしにぴったりのものが手に入ること。「あったらいいな」が実現することで、共働きの悩みが解消され、そのうえ、未来を生きる子どもたちに必要な力を育むとしたら――。共働きに“一石二鳥”、あるいは“一石三鳥”のDIYアイデアの数々を紹介していきます。

 「DIYの精神」を家庭に取り入れることは、子どもに大きなメリットをもたらします。第2回は、手を動かして何かを作ることが、これからの社会を生き抜く子どもになぜ必要なのか、家庭で取り組む際のポイントなどについて、公立小学校で図工専科教員として30年勤務経験もある帝京大学教育学部教授の辻政博さんに話を聞きます。

 後半(3ページ目~)では、整理収納アドバイザーで、平安伸銅工業の3代目社長の竹内香予子さんに、昨今のDIY環境がどれほど進化しているか、なぜ今、共働きにDIYなのか、を伺いました。

【共働きだからこそ「一石二鳥DIY」特集】
(1)  DIYで共働きの悩み解消!親子で楽しめるワザ公開
(2) 少しの「DIY精神」が子どもにもたらす大きなメリット ←今回はココ
(3) 片付けない、勉強しない子に「自分で!」を促すDIY
(4) 突っ張り棒博士が教える 共働きに効く家事時短テク
(5) 「増え続ける子どもの作品問題」をDIYで解決!
(6) 簡単・オシャレ!「100円雑貨リメイク術」

「図工嫌い」はなぜ多いのか

「図工嫌いの人は多いです」と話す帝京大学教育学部教授の辻政博さん
「図工嫌いの人は多いです」と話す帝京大学教育学部教授の辻政博さん

 手を動かして何かを作った記憶を遡ると、「図工」を思い出す人は多いかもしれません。「図工嫌いの人は多いです。最近の学生に聞いても、半分以上が『図工は苦手』と答えます」と帝京大学教育学部教授の辻政博さん。辻さんは、同大の初等教育学科で、小学校や幼稚園の教諭を目指す学生を指導しています。

 「苦手な理由を学生に聞くと、『下手だから』と言います。突っ込んで聞くと、これまでの図工の教育課程で、先生のお手本通りに正しくコピーできることが『上手』とされ、できないと『下手』と成績を付けられた経験がある。図工や中学時代の美術の授業で先生にコンプレックスを注入され、それが原因で嫌いになっている場合が多いです」

 「絵を描く技術やものの作り方を教え込む『美術の教育』は、図工嫌いを生み出します。一方、美術をあくまでも媒介として捉え、感性や発想力、創造力などを育てるのが『美術による教育』です。現在の図工教育は『美術による教育』にシフトしつつありますが、『美術の教育』もまだ根強く残っているので、図工嫌いの子は今も生み出されています」

 技術は後からついてくるもの。「例えば、のこぎりを3回使った子と、100回使った子とを比べると、100回使った子のほうが上手になります。でも、100回使うためには、モチベーションが必要。楽しければ何回でもやりたいと思いますし、最初に『下手』と言われるとやる気を失いますよね」

人間だけが持っている「イメージする力」を伸ばす

 「昔と比べると、現代の子どもたちは、自然の中で遊んだり、様々なものに手でじかに触れたりする経験が減っています。そんな今だからこそ、図工の経験は重要だと思います」と辻さんは言います。それは、なぜなのでしょうか。

辻さんのゼミの学生が作った作品。自然の中で集めてきた素材と100均で買った材料を組み合わせて自由に作ったという
辻さんのゼミの学生が作った作品。自然の中で集めてきた素材と100均で買った材料を組み合わせて自由に作ったという
<次のページからの内容>
・素材に触れることのメリットとは
・何もなかったところに自分の考えを表現していく力
・思考力を働かせている時間が実は一番おいしい
・料理は苦手じゃない、でもDIYは苦手な理由
・「イマドキのDIY事情」どう進化した?
・親が背中で教えられることとは?