「私は小さいころ、大工さんが家を作る建築現場などをじっと見ているのが好きでした。親がDIYをしている姿を子どもに見せるのはとてもいいこと。例えば、ただの木の板が、少しずつ違うものに変わっていく。子どもには素晴らしい刺激になると思いますよ」と辻さん。

公立小学校で図工専科教員として30年勤務経験もある帝京大学教育学部教授の辻政博さん
公立小学校で図工専科教員として30年勤務経験もある帝京大学教育学部教授の辻政博さん

 家庭に、ほんのちょっとの「DIYの精神」を取り入れ、親が何かを作っている背中を子どもに見せることは、子どもにとって様々なメリットがあります。そして、もちろん、親子で一緒に作ることもおすすめだと辻さんはアドバイスします。

 「自分でイメージしたものを、自分の手で作る体験は子どもにとってとても大切。これからの世の中を生き抜く子どもたちに必要な、多様な力を育むことができます」。子どもが自然の中で遊んだり、様々なものに触れて遊んだりする機会が減っている昨今、特に大切だと辻さんは強調します。

 「親が『私は上手にできないから…』『不器用だから私はダメだわ』などと消極的な言動を見せると、それを見ている子どもも、『上手に作らなきゃダメなんだ』と刷り込まれ、子どもにも負の意識が再生産される可能性があります」。

 辻さんには2回目の記事で、家庭で取り組むときのコツなどを教えてもらいます。

 そもそも親子で何かを作ることは楽しいもの。普段子どもと一緒に過ごす時間がなかなか取れない共働き家庭だからこそ、休日のちょっとしたDIYの時間を、子どもとの掛け替えのないコミュニケーションの場にしてみるのもいいかもしれません。5回目と6回目の記事では、100均で買った材料などを使って、親子で気軽に作れる楽しいアイデア実例もたっぷり紹介します。気分転換にぜひチャレンジしてください。

 では明日から、具体的に「共働きだからこそ取り入れたいDIY」を紹介していきます。

(取材・文/日経DUAL編集部 小林浩子)

和田さや子(わだ・さやこ)
ライフオーガナイザー、一級建築士
和田さや子(わだ・さやこ) 現在、大阪府内の工務店「ありさ住宅株式会社」で家づくりの設計を担当。2016年にライフオーガナイザーを取得。以後、家づくりの知識と、ライフオーガナイザーの知識、主婦としての経験を合わせて「カタチ」×「しくみ」=かたづく家を提案している。一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会「片づけ脳力検定」のトレーナーとして、子どもに片付けを教える講座も開催。「こども手帳」のワークショップも不定期で開いている。 公式ページhttp://nigiplus.com/
竹内香予子(たけうち・かよこ)
平安伸銅工業株式会社代表取締役、整理収納アドバイザー
竹内香予子(たけうち・かよこ)全国紙の新聞記者を経て、祖父が興した、突っ張り棒製品トップシェアの平安伸銅工業株式会社を継ぎ、3代目社⾧に。突っ張り棒の技術を応用した新規事業を打ち出し、DIYパーツ「LABRICO(ラブリコ)」や「DRAW A LINE(ドローアライン)」などが人気を博す。“突っ張り棒博士”として、突っ張り棒の正しい使い方や活用ノウハウを、テレビや雑誌などでも数多く発信している。
辻政博(つじ・まさひろ)
帝京大学教育学部教授
辻政博(つじ・まさひろ)東京造形大学造形学部絵画科抽象コース卒業、東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了(教育学修士)、大正大学大学院文学研究科比較文化専攻博士課程単位取得満期退学。公立小学校で図工専科教員として30年勤務。これまで東京都図画工作研究会会長や、NHK Eテレ「キミなら何つくる?」番組委員(2013~2015年度)など多方面で活躍。『図工のきほん大図鑑 材料・道具から表現方法まで』(PHP研究所)など著書、共著多数。現在、ウェブサイト「ズッコファミリア」(美術出版エデュケーショナル)で「ひつじ先生の図工相談室」連載中。学習院大学大学院・学習院大学の兼任講師も務める。