「さすがイクメン、偉い!」は正直ウザいだけ

小沢 長女が保育園に通っていたときのこと。僕が保育園の保護者会に参加したんですね。「今日はお忙しいなかお集まりいただき、ありがとうございました」と先生の挨拶から始まる際、「今日はたくさんのお母さんにお集まりいただき……あ、お父さんもいますね!」(ここでみんなでひと笑い)といった類いのイジリを必ず入れてくるんです。集まったお母さんたちも、「パパが参加なんて偉い! イクメン!」といった言葉をかけてくれます。

―― ママたちは、心の底から称えているのです!

小沢 「イクメン」という言葉をかけられるのは……、正直ウザいだけです(笑)。こちらは特別なことをしているつもりはないし、ことさら取り上げてもらわなくていいんですよ。

 その違和感は何と似ているかというと…男性の参加者がほとんどの飲み会に、たまたま女性が数人で参加していたとします。女性側は何も意識していなかったのに、おじさんは良かれと思って「紅一点!」とか言うじゃないですか。あるいは、たまたま男性の両脇に女性が座っていたら「両手に花だね!」とか。多くの女性たちの内心は、「別に強調することでもないのにな…」ではないですか? あの感じと似ている気がします。

―― 良かれと思ってしていたことが、パパ側を萎えさせていたとは…。

小沢 言わないでいてくれるほうが楽です。薄いハラスメントですよね。さすがに「イクメン」と呼ばれ続けて、その違和感にもだいぶ慣れてしまった部分もありますが、それはそれでよくないのかな、と反省してます。

―― なるほど。そんなものなのですね。気を付けます!

『イクメンと呼ばないで ニブンノイクジ』より
『イクメンと呼ばないで ニブンノイクジ』より

―― さて、家族みんなで出かけるより、ママなし、父子で出かける面白さってありますか。

小沢 妹尾ともよく話をするテーマです。家族4人で出かけたときの子どもが、一番わがままですね。甘えるし、ギャーギャーするし、はしゃぐし…。うちにとって4人全員で出かけることはスペシャル感があるから、きっと嬉しいんでしょう。僕だけ、妹尾だけと親が片方だけのときは、子どもたちがすごく大人の対応をします。長女が3歳、4歳のころからそう。出かける前に、「今日は3人だからね」「がんばるよ」と声をかけると、基本的に落ち着いた行動をしていました。妹尾に聞くと、やはり「母親1人と子どもという組み合わせのときのほうが子どもはしっかりする」と言っています。

―― 確かに! うちの4歳の長男も、私が1人で見る日のほうが、わがまま度が低い! 子どもの主体性、自主性、責任感を伸ばす面で、「今日は、お父さんとだけのお出かけの日だよ」とコミュニケーションをして出かけるのもいいですね。

小沢 3人で出かけて帰宅し、妹尾も交えた夕食時に「今日はああだった」「こうだった」としゃべっているときに、4人でいると見えない子どもの側面に気づくこともあります。妹尾と僕で、それぞれ子どもを1人ずつ連れて出かけたときもまた印象が違いますね。片方の親だけで連れ出すからこそ知れるわが子の姿って、確実にありますよ。

小沢高広
氏名(しめい) おざわ・たかひろ。東京生まれ。マンガ家ユニット「うめ」の構成と演出を担当。『大東京トイボックス』『スティーブズ』などの骨太なストーリーマンガを世に送り出す一方で、作画で妻の妹尾朝子との子育てエッセーマンガ『イクメンと呼ばないで ニブンノイクジ』も出版。単独では、今年1月に公開された『劇場版 マジンガーZ /INFINITY』の脚本を担う。クラウドファンディングによる制作をいち早く取り入れるなど、デジタル時代の作家としても注目されている。女子高生とAIの恋愛冒険譚『アイとアイザワ』(原作・かっぴー)の1巻が発売中。

(取材・文/平山ゆりの)