低温調理器を使えば、中がロゼ色の柔らか肉が完成

―― おいしそう! お子さんには、どのように指示をするのですか。

小沢 食材に刺すキッチン温度計を渡して、「各面5秒ずつ焼いて、全面焼いたら、フライパンから出して、フタして5分寝かせて」というセットを、「肉の中心温度が60度になるまでやって」と頼みます。芯温を60度以上にすると、次第に水分が抜けていき、固さが全面に出てきます。

―― 理科の実験みたいです(笑)。

小沢 子どもは、公園なんかで遊んでるのを見てても分かるように、単純作業の繰り返しに大人より強い。さほど高価な肉を買わなくても、かなり完璧でおいしいローストビーフを子どもが作ってくれますよ。上の子が小1のころからやっていて、今や彼女は肉の塊を見ると「焼かせて」と言います(笑)。

―― 子どもが作れるのはいい! 他の定番料理は?

小沢 「肉や魚を安全に焼く」ことができれば、とりあえず、いいんじゃないですかね。メインの肉や魚があれば、あとはプラスで付け合わせのサラダと、炭水化物があれば家庭料理は十分でしょう! ここ数年は、低温調理器も使います。低温調理器とは、鍋の湯の温度を一定に保てる(一定の温度で温められるから均一に火が通る)ので、「手間をかけずに、放置しておいしいものを作る」のに向いているんです。

―― 本格的ですね。

小沢 そうでもないですよ。事前に仕込んでおくことで、実作業としては相当楽!

【事前の仕込み】
(1)豚など肉の塊を買ってきて、重量の1%の塩を擦り込み、チャック付きポリ袋に入れて空気を抜き、真空状態にする(あれば、真空パック機でOK)。
(2)低温調理器の温度を60度に設定。3~6時間ほど加熱する。。

【実際の調理】
(1)焼き目を付ける程度にソテーする。
(2)少し寝かせて、肉が落ち着いたところでカットする。ワサビ、コショウ、マスタードなどお好みで。

「ほら、切り口がキレイなロゼ! 塊肉を焼くのは、意外に簡単で子どももできます」(小沢さん)
「ほら、切り口がキレイなロゼ! 塊肉を焼くのは、意外に簡単で子どももできます」(小沢さん)

―― 低温調理器は火を使用して加熱するわけではないから、放っておいて別のことができますね。

小沢 色々、小技もありますが、基本は上記の通りです。中が完璧にロゼ色に仕上がります。火が通り過ぎないから、とても柔らかい。もっと低い温度で、サーモンやホタテなど魚介でやってもおいしいですよ。

―― 普段料理をしないパパへ、アドバイスするならば。

小沢 しない人なら、子どもの食べる総菜を買ってくるのが一番! しない人が急に始めて、普段使いしない調味料を買い込んだり、勝手に冷蔵庫の中のものを使ったりして怒られることもあるから気を付けろ!(笑) 何か挑戦したいなら、あらかじめ必要な分量の食材がパッケージされてるミールキットとかがおすすめです。父であろうが母であろうが、興味がないしできないのにがんばろうとしなくてもいいんじゃないですかね。

―― 小沢さんのような夫ばかりなら、料理が苦手なママは解放されるんですけどねぇ…。

小沢 もしお酒が飲める人なら「飲みながら作ろう!」ですね。世の中で一番お酒がおいしくて楽しいのは、キッチンドリンク。飲みながら、料理の味見をしながら作る。これ以上に楽しいお酒の時間はない! 僕はそう思っています。

小沢高広
氏名(しめい) おざわ・たかひろ。東京生まれ。マンガ家ユニット「うめ」の構成と演出を担当。『大東京トイボックス』『スティーブズ』などの骨太なストーリーマンガを世に送り出す一方で、作画で妻の妹尾朝子との子育てエッセーマンガ『イクメンと呼ばないで ニブンノイクジ』も出版。単独では、今年1月に公開された『劇場版 マジンガーZ /INFINITY』の脚本を担う。クラウドファンディングによる制作をいち早く取り入れるなど、デジタル時代の作家としても注目されている。女子高生とAIの恋愛冒険譚『アイとアイザワ』(原作・かっぴー)の1巻が発売中。

(取材・文/平山ゆりの)