「帰りづらい職場」を生むのは、会社の文化や上司の考え方

―― フィリピンやシンガポールのワークスタイルは、日本とはかなり違うのでしょうか。

カリッサ ユニリーバ・ジャパンについていえば、これらの国々との違いはありません。ただ、他の日本の企業については必ずしもそうではないと思います。

 ユニリーバでは、働く時間の長さではなく、成果で評価されますから、みんながなるべく早く仕事を終わらせようと意識しています。よりよいワークライフバランスを実現しようとする企業文化もあります。でも、一般的に日本には、遅い時間まで会社に残っている人を評価する風潮がありますよね。あとは、上下関係をすごく重んじるというか……。もちろんフィリピンやシンガポールも目上の人を尊重しますが、日本はよりその意識が強い。

―― 日本では上司が会社に残っていると、他のメンバーも帰りにくかったりします。

カリッサ そうです。私は日本に来て初めてそれを知りました! だから私はチームメンバーに、「私が会社にいたとしても、みんなが残る必要はない」ということを伝えました。

―― フィリピンやシンガポールでは、こうした慣習はないですか?

カリッサ どの国でも、上司が残っているから帰りづらい、という職場はあると思います。結局、上司次第、会社の文化次第ということではないでしょうか。

 ただ、ワークライフバランスを実現するためには、「自分がどうしたいか」を明確にしておくこともとても重要だと思います。私は幸い、理解のある上司の下で働けていますが、もし夜の11時に上司がメールを送ってきたら、あなたは返信しますか? それを決めるのはあなたです。「私は夜中にメールが届いたら、翌日の勤務時間に返信します」と決めたなら、自分のスタンスを上司に理解してもらえるよう働きかけなくてはいけません。大切なのは、一人ひとりの意識と行動なのです。

フィリピンでは、ナニーが子育てや家事を一手に引き受ける

―― 日本での子育てについてはどのように感じていますか? フィリピンやシンガポールと異なる点はあるでしょうか。

カリッサ 大きな違いがあります。それは、日本にはナニーサービスを利用する文化が根付いていないということです。フィリピンでは、母親が仕事をしている、していないにかかわらず、ナニーが家のことをすべてやってくれます。フィリピンは経済格差が大きいのですが、中間所得層以上の家庭では、アパート住まいでもごく普通にナニーサービスを利用しています。一家に2人か3人のヘルパーがいて、1人が赤ちゃんの世話、1人が料理の担当ということもあります。

 シンガポールでは、私のように外国人として暮らす場合は、子どもがいなければ家事は自分ですることが多いですが、それでも週2回くらいは家事代行サービスをお願いしていました。なので、私も日本に来てからのほうが家事をやるようになりました。

―― それは大きな違いですね。そうすると、ナニーの助けがない日本での子育ては大変ではないでしょうか。

カリッサ そうですね。私たちは夫婦だけで日本に来ているので、助けてもらえる親族も身近にいません。それにベビーシッターの料金もとても高いです! でも日本はいい学校がたくさんあるし、公的なサポートも充実している。国として教育環境がとても整っていると感じます。サポートを利用する際の言葉の壁など大変なことはありますが、それ以上に日本に暮らせて幸せです。