児童文学作家の藤野恵美さんは小説の参考文献として育児書を手に取り始めてから、これまで1000冊もの育児書を読んできました。育児書に触れていく中で、子どもを産む決意をし、今では9歳のお子さんを育てています。

この連載では、まずは小説の参考文献として、その後は「子どもの頃の母との関係」と向き合うために、そして今では親として、とさまざまな目線から育児書に向き合ってきた藤野さんに、子育てをする中で気になるテーマに沿って選んだ育児書を紹介してもらいます。

 前回のエッセーでは、シュタイナー教育と出合い、心引かれつつも、その道を突き進むことを選ばなかった経緯を書きました。

 いろいろと考えた結果、私は息子を「~~教育」と名のついた特徴的な教育方針のところに通わせるのではなく、ごく普通のありふれた保育園に預けることにしたわけですが……。

 その保育園で、思わぬ事態が生じて、結局、モンテッソーリ教育を行っている幼稚園へと転園させることになったのでした。

 今回はその顛末(てんまつ)について、記したいと思います。

 モンテッソーリ教育について、『増補新版 モンテッソーリ教育を受けた子どもたち 幼児の経験と脳』(著:相良敦子、河出書房新社)では、このように説明されています。

 「イタリアの幼児教育者・医学博士のマリア・モンテッソーリ(1870~1952年)は、まず高邁(こうまい)な理想や確かな原理を組み立てて、それに基づいて具体的な教育方法を編み出したのではありません。子どもが自ら現すものをよく観察し、『なぜ、そんなことをするの?』という疑問をもち、その奥底にあった生理学的根拠を知るに至りました。その次の段階として、確認された根拠に基づいて方法を編み出していったのです。(『増補新版 モンテッソーリ教育を受けた子どもたち 幼児の経験と脳』22~23ページより引用)