児童文学作家の藤野恵美さんは小説の参考文献として育児書を手に取り始めてから、これまで1000冊もの育児書を読んできました。育児書に触れていく中で、子どもを産む決意をし、今では9歳のお子さんを育てています。

この連載では、まずは小説の参考文献として、その後は「子どもの頃の母との関係」と向き合うために、そして今では親として、とさまざまな目線から育児書に向き合ってきた藤野さんに、子育てをする中で気になるテーマに沿って選んだ育児書を紹介してもらいます。

 自分の子育てと育児書について語ってきたエッセーの連載も、今回で最後です。最終回のテーマは「自分にぴったりの育児書を見つける方法」です。

 育児書については、たまに否定的な意見を耳にします。たとえば、「育児書通りにいかなくて悩む」とか、「育児書にふりまわされたくないから読まない」とかいうように……。

 自分の親との関係が良好であったり、隣近所や親戚とのつきあいが密接だったりして、助けてくれる人や相談できる人が身近にいれば、育児書など必要ないでしょう。

 育児書なんて読まなくても、まわりの環境に恵まれて、自然体で子育てができる人は世のなかにいると思います。

 でも、私はそうではないので、本という存在に頼るしかありません

 そんな自分にとって、『127人が選んだ わたしの好きな育児書』(編:[月刊クーヨン]編集部、クレヨンハウス)という本はとても励まされるものでした。

 この本は、育児雑誌の『月刊クーヨン』に寄せられた読者の声と、育児に役立つ本の内容紹介の引用、育児書についての有名人へのインタビューなどで構成されています。

 さまざまな人が「自分の好きな育児書」について語っている言葉を読んでいると、うんうん分かる、私もこの本、好き、と思うなど、非常に共感できました。それに、この本を育児書として読むこともできるのか……という驚きがあり、自分の知らない本を見つけると、これも読んでみよう、とわくわくしてくるのです。