海外に転勤した夫に付いていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤に付いていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さんが駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てのあれこれについて考える連載。今回はとうとう最終回です。

駐妻・駐妻経験者からのたくさんの反響

 「私たち女性がいくらモヤモヤを表現したところで、愚痴や文句としか捉えてもらえません。そうした思いを、男性目線で言語化してくれて、すっきりしました。ありがとうございます」

 2018年7月から連載を始めて、ブログのほかTwitterやInstagramなどのSNSを通じて、実に多くの方々から反響を頂くようになりました。そのうち、最も多いのが駐妻・駐妻経験者の皆さまからのこうした声です。

 「目からうろこ」だったのと同時に、そんなことを言われて、うれしくないわけがありません。読者からダイレクトに反応があることは、大いに励みになっています。

 休職、あるいは退職して、配偶者の海外赴任に同行するかどうかで悩んでいる方々から相談を受けたことも何度かあります。悩みの内容は、キャリアの中断・断絶との向き合い方。私とほぼ同じです

実に厄介な「アイデンティティークライシス」

 「やはり、家族は一緒にいたほうがよい」

 「これまでの人生では考えられなかった経験を海外で積むことは、人間的な幅や視点を広げるチャンスでもあります」

 「働いていないことからくる焦りや自己嫌悪、今後のキャリア形成への不透明感は、日々楽しく過ごしていても、常に頭のどこかにあります」

 最終回の記事を書くに当たり、これまでの全連載13回分を一気に読みました。改めて読み返してみると、多少の恥じらいもありますが、すべては、その時々の私の心境や状況を率直に記した、愛する作品群です。5歳の長女、3歳の長男を連れ、渡米したのは2017年の12月。ちょうど2年が経過しました。振り返ってみても、今の自分を考えてみても、初回の記事で記した上記の3つの文章に交錯する思いが集約されます。

 人生の折り返し地点ともいえる45歳にして、初めての海外暮らし、なおかつ家事・育児を引き受ける駐夫・主夫になるとの決断は、繰り返しになりますが、一大決心でした。

旅行で訪れたアイスランドの滝を見物する子どもたち
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