海外に転勤した夫に付いていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤に付いていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤です。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、自ら「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さん。そんな小西さんが、米国NYで駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てにまつわる、あれやこれやについて考える連載です。

 今回は「イクメンという言葉についてのビフォアアフター」「夫婦間マウンティング」「緩やかにつながりたい」などについてお届けします。

イクメンという言葉についてのビフォアアフター

 「小西さん、一緒に『イクメン』という言葉を無くしていきましょう」

 渡米から1年が経とうとしていますが、今でも頭の中を去来する「格言」があります。公私ともどもお世話になっている、ファザーリング・ジャパン(FJ)代表の安藤哲也さんと酒を飲んでいたときに、投げ掛けられた言葉です。

 当時の私は、1年間の育児休業から復帰して、まだ1週間程度しか経過していませんでした。取材して、記事を書くという記者の基本的な動きの感覚がまだ取り戻せなかったころです。十分に慣れていたはずの環境に適応できず、一人でもがき苦しんでいた中での新鮮な提案に、気分が楽になったのを思い出します。

 私は、自身が所属する政治部で、男性初の育児休業取得者でした。復帰したらロールモデルにならなければならない、特に、次代を担う後輩たちのためにも範を示さなければいけない、と自分で自分を追い込んでいました

 その際、キーワードとして、心の軸にあったのが「イクメン」です。老若男女に知れ渡っており、一言で説明できる、便利な言葉だったのです。

 育休前と育休後、取材先に挨拶に行った際、特に考えることもなく「これから、イクメンします」「イクメンから戻りました」と伝えると、相手は意味をそのまま理解し「すごいね」「大変だった?」などと反応を示してくれました。今振り返れば、そうしたやり取りを繰り返すうちに、イクメンたる自分に完全に陶酔していた気がします。

 一方で、イクメンぶりばかりを振りかざすと、長時間残業が当たり前の政治記者の現場で浮いてしまうのではないか。社内の一部からは「リフレッシュできて良かったね」との、全くもって、ありがたくない言葉も頂戴しており、育休前以上のパフォーマンスで見返さなければ、との焦りもありました。記者歴20年の中堅でさえ、そう思ってしまうのですから、私よりも若い記者を取り囲む実態はさらに大変で、過酷です。

次ページから読める内容

  • 今、「イクメン」という言葉を発すると背筋がゾッとする
  • 「イクママ」という言葉はどこにもありません
  • わが家には「夫婦間マウンティング」が少なからず存在
  • 横のつながりを欲し、連帯感を深めようとしている

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